1 疫学
 1997年10月に「臓器の移植に関する法律」が施行され,日本でも脳死での臓器提供による移植が可能になった.しかしながら,脳死臓器提供するには本人の生前の書面による意思表示が必要であったため,15歳未満の脳死臓器提供ができなかった.そのため,15歳以上の小児または成人からしか脳死臓器提供がなかったため,1999年2月に第1 例目の脳死臓器提供以来,改正法が施行されるまでに脳死臓器提供は86例あったが,その内20歳未満の小児に対する脳死移植は,肝移植11例,腎移植6例,心移植6例,肺移植3例,小腸移植2 例に過ぎない.一方,腎臓は心停止後にも提供可能である.2000年に小児(16歳未満)が優先されるレシピエント選定基準が施行された以後は,年間10例前後の16歳未満の小児腎移植が行われてきた.

 いずれにせよ死体臓器提供が少ないため,20歳未満の肝移植の62%633)(2009年までの総数から算出),20歳未満の腎移植の89%634)(2001~2007年の総数から算出),18歳未満の肺移植の86%を生体移植(2009年までの総数を文献635)のデータと上記3例から算出)が占めているのが現状である.生体間移植のできない心臓移植では,海外に生きる望みを繋いできた(法改正後18歳未満の海外渡航心臓移植68件).

 このような現状を打開するために,「臓器の移植に関する法律」の改正法が昨年7月17日に公布され,2010年同日に施行された.改正法では,「本人の意思が不明
な場合には,家族の書面による承諾で脳死臓器提供が可能」となり,臓器提供者(ドナー)の年齢制限がなくなるため,国内でも体の小さな子供が心臓移植や肺移植を受けられるようになった.

 2011年4月に国内初の15歳未満の脳死臓器提供が行なわれ,10歳の拘束型心筋症の小児に心臓移植が行われた.
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)