

クラスⅠ
1. 移植後早期には,カルシニュリン阻害薬(CNI),細胞増殖抑制薬,ステロイドの内,2~3薬を併用し,最初は各薬剤を高用
量で投与し,拒絶反応,感染症,薬剤の副作用などを見ながら移植後3~6か月を目標に減量し,維持量にまで下げる(エビ
デンスレベルC)(成人ではエビデンスレベルA).
2. 細胞増殖抑制薬としてミコフェノール酸モフェティル(MMF)の方が治療を要する拒絶反応の頻度,生存率において,アザチ
オプリン(AZP)より優れている(エビデンスレベルC)(成人ではエビデンスレベルA).
3. CNI 投与時には,トラフなどの血中濃度をモニタリングし,拒絶反応,感染症,薬剤の副作用などを見ながら慎重に投与量を
決定する(エビデンスレベルC)(成人ではエビデンスレベルA).
クラスⅡa
1. 導入療法として抗胸腺細胞ポリクロナール抗体製剤または抗インターロイキン2受容体抗体などの抗体製剤を使用した方が,
移植後急性期の治療を要する拒絶反応の頻度が減少し,腎機能障害を軽減できる(なお,生存率,長期予後への差は出ていない)
(エビデンスレベルC)(成人ではクラスⅡb)
2. 成長発達・副作用の面から,早期にステロイドの離脱を図ることが望ましい(なお,あくまでも拒絶反応を注意深く観察する
ことが大切)(エビデンスレベルC)(成人ではクラスⅡb)
3. 小児(特に新生児,乳幼児:特に抗A,B抗体<1:4)には成人よりABO不適合移植の予後が良い(腎,肝,心において)(エ
ビデンスレベルC).
4. mTOR阻害薬とCNI を併用するときには,腎機能障害などの副作用を軽減するためにCNI の目標血中濃度を下げる(エビデン
スレベルC)(成人ではエビデンスレベルA).
クラスⅡa´
1. 拒絶反応,感染症の頻度・重症度,生存率には明らかな差は出ていないが,美容上の理由で,小児期(特に女児)では,CNI
はタクロリムスを第一選択にする(エビデンスレベルC)
2. 移植後遠隔期に腎機能障害,慢性拒絶反応(心臓移植では移植心冠動脈硬化),移植後リンパ急増多症(PTLD)などを発症し
た際には,mTOR阻害薬への変更は有用である(エビデンスレベルC)(成人でもエビデンスレベルC)
3. グラフト不全を呈するような抗体関連型拒絶反応(antibody mediated rejection)では,血漿交換,抗CD20抗体が有用である(エ
ビデンスレベルC)(成人でもエビデンスレベルC)
クラスⅡb
1. de novo症例におけるmTOR阻害薬の使用(エビデンスレベルC)(成人では,クラスⅡa´ で,エビデンスレベルB)
クラスⅢ
1. 妊娠の可能性がある症例へのMMF 投与(催奇性の点から)(エビデンスレベルC)
2. 免疫抑制薬投与時の生ワクチンの接種(エビデンスレベルC)

3 薬物療法の実際(表51)
ここでは,小児の臓器移植全般について述べるが,臓器毎にプロトコールは異なるので,心臓移植の投与法・投与量を中心に述べ,参考文献も心臓移植を中心に引用した.
以下の薬剤は免疫抑制効果があるので,特別な場合を除いて,副作用に感染症は含まなかった.
表51 小児臓器移植での免疫抑制薬
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)