4 抗体関連型拒絶反応(antibody mediated rejection: AMR)の治療戦略
小児心臓移植の候補者の多くは,以前に同種血管・心臓弁の移植を受けていたり,輸血を受けていたり,補助循環が装着されていたりするため,自分以外のHLAに
対して感作されている.近年,抗HLA抗体の検出方法は発達したので,AMRという現象が明らかになり,同種片にある抗原に対する抗HLA抗体(たとえばドナー特異的抗体)が,急性拒絶反応,グラフト不全や慢性拒絶反応に関与していることがわかってきた679)-681).
ABO不適合移植では,血液型抗体による拒絶反応が発症するので,AMRの予防・治療に準じた免疫抑制療法が行われている.ABO不適合移植は従来生体移植の分野で発展したが,その経験から死体移植でも行われるようになってきている(UNOSでは心臓も).我が国でも,本年から2歳未満で劇症肝炎(point 9点)の場合,ABO不適合脳死臓器提供が可能となった.
移植前に血漿交換やRituximab(リツキサン)を併用することにより,成人においても腎臓,肝臓のABO不適合移植の生存率が向上した.抗ABO血液型抗体の産
生のすくない乳幼児では,そのような前治療なくて,心臓,肝臓,腎臓でABO適合と生存率に差がないことが報告されている682).
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)