7 多形性心室頻拍
多形性心室頻拍は頻拍中のQRS 波形に多形性を認める頻拍で,多くは非持続性で自然停止するが,時に心室細動に移行する.多形性心室頻拍はQT 延長を伴っている場合と伴っていない場合に分けられる.この区別は,両者の治療法が異なるので重要である321).
QT 延長を伴わない多形性心室頻拍は,心筋炎,心不全,ショックなどの心機能低下に伴って起こる場合が多いが,この場合は心室細動への前駆的不整脈といえる.明らかな心疾患を伴わずおこる多形性心室頻拍(特発性)の代表的なものに,Brugada 症候群,カテコラミン誘発多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia: CPVT)313),314),322)がある.したがってここでは,小児期発症例の多いCPVTの薬物治療について記載する.
CPVT は極めて稀な心室頻拍である313),314),322).本症の定義は,① 3 心拍以上,2 種類以上のQRS 波型をもつ心室頻拍がカテコラミンまたは運動負荷で誘発されること,② 電解質異常,心筋症,虚血性心疾患など多形性心室頻拍のおこりうる病態が存在しないこと,③QT延長症候群,Brugada 症候群などが否定されたものと定義される.
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)