Ⅱ 母乳と妊娠・胎児の薬理学

 妊娠・授乳期の母親に薬物療法を必要とする症例がある.この場合,母体に投与した薬物が胎盤・母乳を介して胎児・乳児に移行する可能性があり,胎児・乳児へ
及ぼす薬理作用への配慮が必要となる.授乳期の薬物療法と母乳・乳児への影響,妊娠期の薬物療法と胎児の薬理学的相関と胎児毒性の評価に関する基本的な考え方をまとめる.一方,胎児診断の進歩とともに,母体を介して経胎盤的に薬物を投与し胎児治療を行うことも現実的な治療選択肢となっている.なお,妊娠・授乳期の薬物療法に関しては,倫理的な配慮から無作為化二重盲検比較試験は行われないため根拠情報のエビデンス・レベルには限界がある.こうした中でも胎児曝露例の前向きコホート研究,人母乳並びに乳児血中薬物濃度解析等の臨床薬理研究が得られるものでは科学的根拠に基づく評価が可能となっている.
1 母乳と乳児の薬理学 2 妊娠と胎児の薬理学 3 妊娠・授乳期の薬物療法に対する母児のリスク・ベネフィト評価の重要性 4 妊婦・授乳婦への薬物療法情報について
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)