排泄副作用物理的T1/2 γ線エネルギー小児に対する安全性
胆道・消化管,腎臓金属味,動悸*4 6.01時間141keV 確立していない
胆道・消化管,腎臓口内苦味感や金属臭*5 6.01時間141keV 確立していない
消化管,腎臓承認前後調査では副作用なし72.91時間70.8keV 確立していない
腎臓異臭(0.43%),味覚異常(0.1%) 13.27時間159keV 確立していない
腎臓ショック,アナフィラキシー0.1%未満13.27時間159keV 確立していない
腎臓,肝臓承認前後調査では副作用なし3.261日93.3keV 確立していない
腎臓発熱,嘔吐,血圧低下*6 109.8分0.511MeV 確立していない
腎臓承認前後調査では副作用なし6.01時間141keV 確立していない
一般名商品名成人投与量*2(MBq*3) 分布1.心筋血流イメージング
Technetium⊖99m tetrofosmin マイオビュー185~740 心筋,肝臓,肺Technetium⊖99m MIBI カーディオライト370~555 心筋,肝臓,肺Thallium chloride-201(Tl-201) 塩化タリウム⊖201 74 腎臓,心筋,肝臓,脾臓2.心筋脂肪酸代謝イメージング
I-123betamethyl-iodophenyl-pentadecanoic acid(I ⊖123BMIPP) カルディオダイン74~148 心筋,肝臓,筋肉(脂肪酸代謝をしている臓器) 3.心臓交感神経機能イメージング
I-123 metaiodobendzylguanidine(I-123 MIBG) ミオMIBG-I 123 111 交感神経終末,カテコールアミン産生細胞4.その他
Ga-67 citrate クエン酸ガリウム1.11~1.85/kg 腎臓,肝臓,骨,骨髄Fluorodeoxyglucose(F-18) FDGスキャン74~370 脳,心臓テクネシウム大凝集人血清アルブミン
(Technetium⊖99m MAA)*1 テクネMAA 37~370 肺毛細血管でトラップされる
3 核医学検査用薬剤の種類
表47に小児期心疾患で使用される核医学検査用薬剤を示す.小児に特有な薬剤は存在せず,心筋血流イメージング,心筋脂肪酸代謝イメージング,心臓交感神経機能イメージングに使用する薬剤がほとんどを占める.
(1)小児の心筋血流イメージングの主な対象は,先天性冠動脈奇形,川崎病冠動脈障害245),心筋症,心筋炎,完全大血管転位スイッチ術後および右室負荷による右室肥大の評価である.テクネシウム心筋血流製剤はTl-201と比較して,放射線被ばくが少量608)であり,乳幼児の小心臓でも明瞭な心筋画像を得られ612),心電図同期心筋血流イメージングを併用して行うことによって心機能評価が可能である613).これらの理由から小児の心筋血流イメージングではテクネシウム心筋血流製剤の有用性が高い.テクネシウム心筋血流製剤では,安静時と負荷(薬物,運動)時の撮像を行うことによって虚血や生存心筋などの評価を行い,両撮像を同日に行う1日法と個々に行う2 日法がある.1日法では時間的節約が患者にとって利点であるが,1日2 回投与の撮像を行うためには放射線被ばくとアーチファクトを考慮しなければならない.安静時先行1日法の場合,安静時と負荷時の撮像間隔を開けること,安静時画像を打ち消した負荷時の画像を得るために2~ 3 倍量以上のテクネシウム心筋血流製剤を負荷時に投与ことが必要になる.よって,1日総投与量を減量するために先行して行う安静時撮像の投与量を減らし,画質を担保するために撮像時間を延長する.このように治療用薬剤とは異なり,特徴的なことは同様の検査用薬剤で同様の対象疾患であっても検査目的によって投与量が異なることである.また,心筋血流イメージングでは肝臓を中心とした周囲臓器からの画像アーチファクトを生じやすいため,核種投与から撮像までの時間を十分にあける.また,テクネシウム心筋血流製剤による撮像時の背泳ぎスタイル(Monzen体位)が,画像アーチファクトの軽減および核種投与から撮像までの時間短縮を可能にした報告がある614).
(2)心筋脂肪酸代謝イメージングでは,I-123 betamethyliodophenyl-pentadecanoic acid( I-123BMIPP) が用いられる.Tl-201との2 核種同時撮像によって心筋血流と脂肪酸代謝のミスマッチを検出することが可能であり,小児における有用性は左冠動脈肺動脈起始症術前術後615),川崎病重症冠動脈障害616),先天性心疾患617)の報告がある.
(3) 心臓交感神経機能イメージングでは,I-123 metaiodobendzylguanidine( I-123MIBG)が用いられ,心筋への取り込みおよび心筋からの洗い流し(washout)
を心筋と縦隔の取り込み比で算出することによって,評価が可能である.肥大型心筋症618),拡張型心筋症および完全大血管転位のスイッチ術後評価619)などで,心機能異常とwashout比(%WR)や心筋/縦隔比(H/M)などのI-123MIBG指標の異常との関連が報告されている.また,小児期心不全の心事故発生の危険因子として,遅延像のH/M<1.8または%WR≧48%が目安になるという報告がある620).また,I-123BMIPPやI-123MIBGのヨード標識核医学検査用薬剤投与の前処置として,甲状腺ブロック目的でルゴール液内服が必要である.
(4)その他:心筋炎の補助的診断にGa-67 citrateが使用され,川崎病の心筋炎の診断に有効であった報告がある621).しかし,心エコーによる診断で十分なことが多く,放射線被ばくも多いことから,小児期心疾患の診断として推奨されにくい.
心筋梗塞後の生存心筋に関する診断に用いられるFluorodeoxyglucose( F-18)は,ポジトロン製剤として期待される核種であり,川崎病を対象とした小児の報告
がある622).しかし,サイクロトロンによる生成が必要で短い半減期の問題点もあり,使用される地域および施設が限定される.
日本循環器学会の心臓核医学検査ガイドライン2010年改訂版611)による小児における核医学検査の検査指針レベルおよびエビデンスレベルを示す.
・心筋血流イメージングによる小児の心筋虚血評価(クラス指針IIa,レベルB)
・心筋血流イメージングによる右室圧負荷の推定(クラス指針I,レベルC)
表47 小児期心疾患で使用される核医学検査用薬剤
*1 肺血流シンチグラフィとして使用
*2 医療用医薬品添付文書から引用した成人投与量
*3 Megabecquerel
*4 承認後調査で0.1%未満(承認前では副作用なし)
*5 承認前調査で57.0%,承認後調査で20.4%
*6 承認前調査で各々0.3%
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)