アデノシン,ATP 負荷法の副作用
1 ほてり感(35~40%)
2 胸痛(25~30%)
3 呼吸苦(20%)
4 めまい感(7%)
5
房室ブロック(8%),2度房室ブロック(4%),完全
房室ブロック(1%未満)
6 1mm以上の虚血性ST 低下(6%)
7 致死的,非致死的を合わせた心筋梗塞(0.1%未満)
ドブタミン負荷法の副作用
1 胸痛(31%)
2 動悸(29%)
3 頭痛(14%)
4 ほてり感(14%)
5 呼吸苦(14%)
6 頻脈性不整脈(8~10%)
7 1mm以上の虚血性ST 低下(33%)
アデノシン,ATP,ジピリダモール負荷法の禁忌
1 薬物治療によっても安定化していない不安定狭心症
2
ペースメーカ治療の行われていない2度あるいは3度房室ブロック
3
ペースメーカ治療の行われていない洞不全症候群ある
いは症候性の著しい徐脈
4 QT 延長症候群
5 高度な低血圧
6 代償不全状態の心不全
7
アデノシン,ATP,ジピリダモールに対する過敏症の既往症例
8
喘息等の気管支攣縮性肺疾患のある患者,その既往の
ある患者あるいはその疑いのある患者
9
ジピリダモール,アミノフィリン製剤,カフェインを
含んだ食品を12時間以内に摂取している場合
ドブタミン負荷法の禁忌
1 薬物治療によっても安定化していない不安定狭心症
2
閉塞性肥大型心筋症や高度大動脈弁狭窄症などの流出路狭窄
3 ドブタミンに対する過敏症の既往症例
4
頻脈性不整脈,重症不整脈(心室頻拍,心室細動など)の既往
5 コントロール不良の高血圧(>200/110mmHg)
6 大動脈解離または大きな大動脈瘤
7 β遮断薬服用者
8 急性心筋梗塞発症1週間以内
一般名商品名規格投与量*1 T1/2*1 小児に対する安全性*1
アデノシンアデノスキャン1バイアル20mL 中60mg 0.12mg/kg/分を6分間10秒未満確立していない
アデノシン三リン酸(ATP) アデホスL コーワ1アンプル2mL 中10mg 0.16mg/kg/分を6分間10秒未満確立していない
ジピリダモールペルサンチン静注1アンプル2mL 中10mg 0.142mg/kg/分を4分間24.6分確立していない
ドブタミンドブトレックス注射液1アンプル5mL 中100mg 3分ごとに5~10μg/kg/分ずつ増量し,最高40μg/kg/分
3.58分少量より慎重に開始すること
4 核医学検査用の負荷試験薬剤
充分な運動負荷がかけられない小児の心筋血流イメージングでは,薬物負荷検査が必要になる.核医学検査に使用される負荷試験薬剤を表48に示す.小児に特有な薬剤は存在せず,アデノシン,ATP,ジピリダモール,ドブタミンを使用する.アデノシンは0.14mg/kg/分を6分間かけて持続点滴静注する623),624)が,本邦で負荷試験薬剤として認められている投与量は0.12mg/kg/分を6分間かけての持続点滴静注方法である625).ATPは0.16mg/kg/分を6分間かけて持続点滴静注する626).ジピリダモールは0.142mg/kg/分を4 分間かけて持続点滴静注する627).ドブタミンは5μg/kg/分から投与を開始し,3分ごとに5~ 10μg/kg/分ずつ増量し,最高40μg/kg/分まで投与する628),629).2012年12月現在で核医学検査用負荷試験薬剤として国内で小児に承認されているのはない.
日本心臓核医学会リスクマネージメント委員会の負荷心筋シンチグラフィに関する安全指針630)によるアデノシン,ATP,ジピリダモール,ドブタミン負荷法の禁忌
を表49に示す.禁忌事項については,検査前に同伴家族および主治医にあらかじめ確認する必要がある.成人のアデノシン,ATP,ドブタミン負荷法の副作用を表
50に示す.成人ではアデノシン,ATP負荷による副作用は,ほてり感等の軽微な症状を含めると全体の80%程度になる.乳幼児に対するアデノシン負荷による副作
用の大規模な報告はないが,ほてり感は顔面紅潮として,他の症状は不機嫌,鎮静からの突然の覚醒や説明のつかない頻脈として表現され,副作用の早期発見として被検者の観察が非常に重要である.副作用発現が負荷試験継続による利点を上回ると判断された場合には,負荷試験を直ちに中止するべきである.副作用発現時には拮抗薬としてアミノフィリンがあるが,アデノシン,ATPの半減期が10秒以内と非常に短時間であるため,投与中止のみで症状の多くは消失する625).ジピリダモールの半減期は約25分と長く,副作用発現時のコントロールが他の負荷試験薬剤と比較して難しいばかりでなく,遅発性の副作用を認める場合があり,撮像後のバイタルサインの確認が必要である.ジピリダモールは小児において安全に施行できる負荷試験薬剤である627)が,高度狭窄を伴う多枝病変の川崎病冠動脈障害例ではジピリダモールによる狭心症発作の報告もある631).ドブタミンの半減期は数分と短時間であり,副作用の多くは投与中止によって消失する.重度の副作用出現時は短時間作用型β遮断薬の静注が有効であると報告されている632).
・アデノシンによる小児の核医学検査負荷試験(クラスIIa´)
表48 核医学検査用負荷試験薬剤
*1 医療用医薬品添付文書から引用
表49 負荷試験薬剤の禁忌
中田智明ほか.負荷心筋シンチグラフィに関する安全指針.
心臓核医学2008年38号の8,9ページから引用改変
表50 負荷試験薬剤の副作用
中田智明ほか.負荷心筋シンチグラフィに関する安全指針.
心臓核医学 2008;38:8-9.引用改変
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)