3 糖尿病に合併した高血圧
①疫学

 思春期の糖尿病症例は同年代の健常な児に比べ収縮期,拡張期血圧とも高い.特に2 型糖尿病症例においては,本態性高血圧の合併が良くみられ,思春期2型糖尿病症例の2~ 3割が高血圧を合併しているとの報告もある389)-392)

②薬物療法の実際

 小児の糖尿病に合併した高血圧の治療においては,糖尿病性腎症の発症や進行に対する抑制効果も期待できるACE-I が第一選択薬として用いられてきたが363),381),389),392),393),近年ARBに関しても小児における有効性と安全が報告されてきており,今後第一選択薬の一つとなりうる.ACE-I とARBの併用療法については,現時点では一定の見解は得られていない.ACE-IやARBのみでは効果が不十分な場合はCa拮抗薬やβ 遮断薬が選択される.このうちβ遮断薬に関しては低血糖時に症状をマスクする可能性があるため低血糖のリスクがある症例では使用を控えるべきであり,さらに一部のβ遮断薬は耐糖能の悪化の報告がある394)-396).降圧目標は腎性高血圧と同様,本態性高血圧より厳格なコントロールを目指すべきである.
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)