4 褐色細胞腫に合併した高血圧
①疫学
褐色細胞腫に合併した高血圧は小児の高血圧の1%程度を占め,また小児の褐色細胞腫症例の60~ 90%以上が持続的な高血圧を合併しているといわれている.また小児の褐色細胞腫の40%近くは遺伝的な素因を有するとされている397).
②薬物療法の実際397)
褐色細胞腫の治療の根幹は外科手術であるが,術中のリスクを最小限にするため,術前10~ 14日前からカテコラミンの作用をコントロールするための薬物療法を行
う357).小児における術前治療は確立されたものはないが,本邦では初期治療としてα遮断薬のドキサゾシンが使用される事が多い.β遮断薬は頻脈のコントロール目的で使用が考慮されるが,α受容体に対する非競合性の刺激作用を有するため,α遮断薬による治療が適切に行われてから開始すべきである.本邦ではプロプラノロールが使用される事が多い.α遮断薬のみでは十分な血圧コントロールが得られない場合の第二選択としてはCa拮抗薬が挙げられる.
降圧目標は特に小児の場合,明確なものはない.現時点では正常血圧を目標とするのが妥当と思われる.
褐色細胞腫の患者においては慢性的な血管収縮による血管内容量の低下をきたしている場合が多く,必要に応じ術前に塩分や水分の負荷も考慮する.
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)