3 Kチャネル遮断薬
①アミオダロン
適応疾患;ほとんどの上室性,心室性頻脈性不整脈に対して有効である可能性があるが,後述のような副作用の問題があり,一般に他の抗不整脈薬が無効な場
合や致死的な不整脈に対して用いる薬剤として位置づけられている.小児でも先天性心臓病術後を含む様々な不整脈に対する有効性が報告されている.
静注薬:
初期投与量5 mg/kg(30 分以上かけて)または1 mg/kg bolus を5 回まで(5 分以上間隔をあけて),維持量10 mg/kg/日.
経口薬:初期投与量は10~ 20 mg/kg(分1~ 2),1~2 週間,維持量は5 ~ 10 mg/kg(分1~ 2).
有効血中濃度:500~ 1000 ng/mL.
Saulら347)の小児を対象としたアミオダロンの効果に関する前方視的研究(対象:日齢30~ 14.9 歳,中央値1.6歳の小児61例:上室頻拍26例,JET31例,心室頻拍4 例)では,効果が出るまでの時間は1 mg/kg,5 mg/kg,10 mg/kgでそれぞれ28.2,2.6,2.1時間(中央値)で初期投与量に比例すると報告され,初期投与量 1 mg/kg では十分な効果が得られないと結論している.副作用は87%に認められ,多い順に,低血圧,嘔吐,徐脈,房室ブロック,吐気であった.アミオダロン投与自体が原因となった可能性のある死亡が2 例あるため,小児では副作用の出現に十分注意すべきである.
以上より,小児の重症頻脈性不整脈に対する静注アミオダロンの投与法は,初期投与量5mg/kgをゆっくり静注し,必要に応じて初期投与量と同量を1~ 2 回追加し,10~ 20 mg/kg/日を数日間維持する方法が適切と考えられる.
Kチャネル遮断作用は心房筋,心室筋,プルキンエ線維,洞結節,房室結節を含むすべての心筋細胞のAPD,不応期を延長,Na チャネル遮断作用,β 受容体遮断作用,Ca チャネル遮断作用としての性質を合わせ持つ.他の抗不整脈薬にみられない特徴として,心収縮能の抑制が少ないこと,血中濃度の半減期が3 ~ 15 週間と極めて長いことがあげられる.ほとんどが肝臓代謝である.副作用は,心外毒性として肺線維症,甲状腺機能障害,角膜沈着,光線過敏,発疹,頭痛,嘔吐などがあり,心電図変化としてはRR,PR,QRS,QT 時間の延長がみられ,TdPの発症がある.
②ソタロール
適応疾患;心室頻拍,アミオダロンと同様である.
経口薬:1 ~ 2 mg/kg から始め,6 mg/kg まで増量(分2),または2 歳以上の小児に対して体表面積換算で,90~ 100 mg/m2/日(分2)で開始し,最大
250mg/m2/日.新生児および6 歳以上では2mg/kg/日で開始し,目標維持量は4mg/kg/日,新生児を除く6 歳以下の乳幼児では3mg/kg/日で開始し,目標維持量
は6mg/kg/日とされている348).
有効血中濃度:800~ 5,000ng/mL.
心筋の早く活性化される遅延整流K チャネル電流(IKr)を抑制してAPD を延長させ,心房筋,心室筋,房室結節,房室副伝導路(順行性,逆行性伝導の両者)
の不応期を延長させる.ソタロールはK チャネル抑制に加えII 群(β 受容体遮断薬)としての作用を合わせ持つ.
副作用としては疲労感,めまい,呼吸困難など.催不整脈性は約10%にみられ,徐脈349),最も重篤なものはQT 延長に伴うTdPがある.特に徐脈や低カリウム血症はTdP発症の誘因となるため注意を要する.
③ニフェカラント(シンビット)
適応疾患:先天性心疾患術後の接合部異所性頻拍(JET)に対する有効性などが報告されている350).
静注薬:初期投与量0.15~ 0.3 mg/kg(10 分かけて)
維持量0.2~ 0.4 mg/kg/時.
有効血中濃度:不明.
純粋なIKr チャネル遮断作用を持つ.難治性の心室頻拍,心室細動に対して高い抑制効果があるとともに,心室細動に対する除細動閾値を低下させることが知られている351).
副作用として問題になるのはIII 群薬に共通のものとしてQT 延長に起因するTdPや徐脈がある.
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)