2 Caチャネル遮断薬
 ベラパミル,ジルチアゼムは主にL 型Ca チャネルをブロックすることを目的に投与される.ベプリジルはCa チャネル遮断薬に分類されているが,L 型Caチャネル抑制効果のみならず,遅延整流K+ 電流の遅い成分(IKs),速い成分(IKr),心房筋に特異的な非常に速い活性化過程を示す遅延整流K+ 電流(IKur),アセチルコリン感受性K+ 電流(IK,ACh),Na 電流抑制など幅広い作用があり,III 群薬に近い性質を持つ.

①ベラパミル339),340)

 適応疾患;心房細動,心房粗動,発作性上室頻拍,頻脈性不整脈
 成人:
 静注薬;5 mg を必要に応じ希釈し,5 分以上かけて緩徐に静注する.
 経口薬;1 回40~ 80 mg を1 日3 回経口内服.
 小児:
 静注薬;0.1~ 0.2mg/kg 希釈し5 分以上かけて緩徐に静注する.(但し,1回5mgを超えない)
 経口薬;3 ~ 6 mg/kg/日を分3 経口内服.

②ジルチアゼム339),341)

 適応疾患;頻脈性不整脈(上室性)
 成人:
 静注薬;上室頻拍症の場合,10mgを必要に応じ希釈し,約3 分かけて緩徐に静注する.
 小児:
 静注薬;0.1~0.2mg/kg 希釈し5 分以上かけて緩徐に静注する.

③ベプリジル

 適応疾患:持続性心房細動,頻脈性不整脈(心室性):他の抗不整脈薬が使用できないか,又は無効の場合
 成人:
 経口薬;50~ 100 mg/ 日,分2.
 小児:
 経口薬;1~ 2 mg/kg/ 日を分2 経口内服.
  有効血中濃度は,感度以下でも有効な場合があり,患者の状態にあわせ少量から開始することが好ましい.

[Ca チャネル遮断薬使用上の注意,副作用]

① 新生児,乳児期には禁忌とされる.ベラパミル,ジルチアゼムは陰性変力作用を有するため心機能の低下を伴う患者には慎重投与が必要である.陰性変力作用を
  有する他薬剤との併用時にも注意を要する.またCaチャネル遮断薬の過量投与は,完全房室ブロック342),ショック343)や死亡の原因344),345)になりうるの
  で,投薬量,方法について詳細に保護者等に説明を行うと同時に誤飲予防の説明を行う.
② 乳児期以降の患者においても心機能の低下した患者には注意を要する.
③ グレープフルーツはチトクロームP450 の一種であるCYP3A4 の活性を阻害し血中濃度を上昇させ副作用の発現が高まる.
④ ベプリジルの特異的作用は,アミオダロンと同様,陰性変力作用は少ないが,心室筋のIKr,IKs を抑制することによるQT延長に注意する必要がある.ベプリジル
  によるQT dispersionがβ遮断薬との併用で減少することが報告されておりTdPの発生が抑制される可能性346)がある.
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)