一般名商品名作用機序剤型投与経路・用量・用法
ニトロプルシッドニトプロGC活性化注射液0.5~3μg/kg/分 持続静注
ニトログリセリンミリスロールGC活性化注射液0.5~3μg/kg/分 持続静注
ミリステープ貼付剤
ヒドララジンアプレゾリン動脈拡張注射液0.1~0.5mg/kg/回 静注(最大20mg)錠・散0.25~0.75mg/kg/回
フェントラミンレギチンα1/α2遮断注射液0.05~0.1mg/kg/回 静注(最大5mg)2.5~15μg/kg/分 持続静注
ニフェジピンアダラートカルシウム受容体遮断カプセル0.1~0.5mg/kg/回 8時間毎( 最大20mg)
エナラプリルレニベースACE抑制錠0.1~0.4mg/kg/日 分1~2
成人2.5~5mg/日 10~40mg/日まで増量
リシノプリルロンゲスACE抑制錠0.08mg/kg/日 分1(最大40mg)
カプトプリルカプトリルACE抑制カプセル・錠・細粒0.1~0.5mg/kg/回 8時間毎
成人6.25~25mg/回 8時間毎
カルベジロールアーチストβ1/β2/α1遮断錠0.05mg/kg/回を1日2回から開始し0.1~0.5mg/kg/回 1日2回まで週毎に増量
成人の最大量25~50mg/回 1日2回を超えない
メトプロロールセロケン,ロプレソールβ1遮断錠1~2mg/kg/日 分2
3 β遮断薬
Waagsteinらは拡張型心筋症患者にβ遮断薬を投与することで心不全症状が改善し心機能が回復することを示し,さらには予後改善効果を報告した.その後,US
Carvedilol studyではカルベジロール,CIBIS II 試験ではビソプロロール,そしてMERIT-HF試験ではメトプロロールの慢性心不全における予後改善効果が証明され
た.COPERNICUS試験ではNYHA IV度の重症心不全に対しても死亡率改善効果が示され,CAPRICORN試験では症状を有しない左室駆出率低下患者に対する死亡率低下が証明された.
本薬剤は小児心不全を対象とした最も大きな臨床試験では有効性は認められていない152).しかしこれは小児心不全の多様性に起因すると考えられており,サブ解析では“左室を主心室にする症例”に対しては有効で,これは他の小児拡張型心筋症を対象とした臨床試験の結果と一致する153),154).現在小児科領域においてはカルベジロール,メトプロロールが用いられることが多い155).メトプロロールは,初めて心不全に有効であることが証明されたβ遮断薬である.カルベジロールはα,β 受容体遮断作用と抗酸化作用を持つ.これらの薬剤はACE-I と異なり,心筋リモデリングを抑制するだけでなく逆リモデリング,すなわち左室リモデリングを逆行させ左室を小さくし,収縮性の改善をもたらすという特徴がある.この効果はACE-Iを併用した際に,より効果が大きいことが知られている.
β遮断薬は“心機能を低下させる薬剤”であるため,少量から開始し,漸増する.投与初期は心機能が低下することが少なくないため,もともとの心機能が非常に悪
い場合は入院して導入する.また導入時の心機能低下にはベータ受容体を介さないPDE3 阻害剤の投与が有効である.少量でも有効であるという報告もあるが忍容性があれば投与量が多い方が有効である.成人ではカルベジロールのAHAガイドライン推奨量50mg/日に対して日本での投与量は5~ 20mg/日と少なく設定されている.これは少量でも有効であるという日本での臨床研究に基づいて設定されているが,このデータでも容量依存性に心不全入院・死亡率を減少させるという点は同様であり,また最近では日本人においても容量依存的に予後を改善するとの報告もある.小児では血中濃度が上昇しにくいという報告もあり152)可能な限り増量が望ましい.表6は欧米での投与量であり日本国内ではメトプロロールは同程度の量が,カルベジロールはこの半量程度が投与されているものと推測されるが,国内でも欧米と同量のカルベジロール投与で有効であったという報告もある.
CIBIS-III ではβ遮断薬とACE-I はどちらを先に導入しても全死亡,全入院などに変わりがなかったものの低駆出率群ではβ遮断薬先行群で成績が良かったとされ
ている.しかしながら重症心不全ではベータ遮断薬を安全に導入するために,ACE-Iを先に導入し心機能に余力を持たせた状態でβ遮断薬を導入することも考慮され
るべきであろう.Val-HeFT試験ではACE-I,β遮断薬投与患者にARB追加投与をすることで予後を悪化させる可能性が懸念されたが,CHARM-Addedでは3者併用で予後の改善が認められている.気管支喘息患児では禁忌である.また心機能を落とし,心内伝導を抑制する薬剤であるので注意が必要である.
小児左室収縮不全に基づく鬱血性心不全に対するカルベジロール投与
クラスIIa エビデンスレベルC
表6 米国のtextにある血管拡張薬の小児投与量
ACE,アンジオテンシン変換酵素:GC,グアニル酸シクラーゼ
*薬用量はMoss and Adams’ Heart Disease in Infants, Children, and Adolescents 6 th ed.
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)