8 バルビツール酸(チオペンタール,サイアミラール)
[適応]
全身麻酔の導入,局所麻酔薬中毒・破傷風・子癇等に伴う痙攣.
[用量]
麻酔導入には1 歳以上の健康な小児に対しては5~6mg/kgのチオペンタールを静注する.乳児では7~8mg/kgが必要な場合がある.痙攣重積発作には5mg/kg
を静注し,さらに必要に応じて2mg/kg/時から持続投与を開始し,脳波で重積状態が消失するのを確認するまで徐々に10mg/kg/hrまで増量する.クマリン系抗凝固剤
の抗凝固作用が減弱することがある.肝臓で代謝され,尿あるいは胆汁から排泄される.成人ではチオペンタール3~ 5mg/kgを投与すると15~ 20分後に覚醒するが,このとき投与量の18%しか代謝されておらず,血中濃度の低下は再分布による486),519).小児の排泄相T1/2は約6.1時間と成人の約半分である486).
[禁忌]
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者.ショックまたは大出血による循環不全,重症心不全患者,急性間歇性ポルフィリン症患者(酵素誘導によりポルフィリ
ン合成を促進し,症状を悪化させるおそれがある),アジソン病の患者(催眠作用が持続または増強するおそれがある.血圧低下を生じやすい.また本疾患は高カリウ
ム血症を伴うがカリウム値が上昇するおそれがある),重症気管支喘息の患者.
[副作用]
アナフィラキシー様症状を起こすことがある.末梢静脈の拡張,心機能の抑制により血圧が低下する.用量依存性の呼吸抑制を生じる.血管外漏出により局所刺激や壊死を起こすことがある.添付文章にある筋注によるrisk benefit ratioは極めて高いと考えられる486).
[使用上の注意点]
乳児では,全身麻酔の導入に必要なチオペンタールの量には個人差が大きい.原則として投与前には絶飲食時間をとる.直腸内投与が,小児に対する検査や処置の麻酔法として1990年以降のいくつかの論文で報告されている486).用量依存性に脳代謝を抑制し,脳血流と頭蓋内圧が低下するため頭蓋内圧の低下を目的として用いられることがあるが,バルビツール酸系薬物が外傷性脳損傷の神経学的予後を改善する文献的証拠は得られていない486),520).
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)