7 ケタミン
[適応]
 添付文章では手術,検査および処置時の全身麻酔および吸入麻酔の導入であるが,鎮痛・鎮静効果を併せ持つことから,前投薬,全身麻酔時の鎮痛補助,処置・検査時の鎮静,術後の鎮痛・鎮静にも使用される517)

[用量]
 初回,筋注では4 ~ 8mg/kg,静注では1 ~ 2mg/kgを静注し,初回量と同量または半量を追加投与する.全身麻酔時の鎮痛補助目的には,0.25~ 0.5mg/kgを静注し,半量を30 分ごとに追加投与,あるいは0.25~ 0.5mg/kg/hrを持続静注する.筋注した場合は,3 ~ 4分で手術可能となり,15~ 30分前後持続する.静注後は30秒から1 分で意識消失し,10~ 20分前後持続する.前投薬としては5~ 6mg/kgを経口投与あるいは5~ 10mg/kgを経直腸投与する.麻薬性鎮痛薬等中枢神経抑制薬との併用で覚醒遅延を起こすことがある.β遮断薬との併用で血圧降下作用が増強することがある.慢性・急性アルコール患者では麻酔効果が不十分なことがある486).ケタミンは,大部分が肝臓においてチトクロームP450 により代謝される.排泄相T1/2は3か月以下184.7分,4~12か月65.1分,4 歳31.6分とされる486)

[禁忌]
 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者.脳血管障害,高血圧,脳圧亢進症および心代償不全の患者.痙攣発作の既往歴のある患者.添付文書では外来患者も麻酔前後の管理が行き届かないため禁忌である.

[副作用]
 まれに急性心不全を起こすことがある.通常,呼吸抑制は軽度であるが過量投与した場合および静注速度が速い場合には呼吸抑制,無呼吸または舌根沈下が起こることがある.痙攣(喉頭痙攣,声門痙攣または全身痙攣等)が起こることがある.本剤は喉頭痙攣の原因となる口腔内・気道分泌物を増加させるためアトロピンの事前投与が推奨される.15%前後に夢のような状態,幻覚あるいは興奮,錯乱状態等の覚醒時反応が起こるとされる.通常数時間で回復するが,まれに24時間以内に再びあらわれることがある.脳血管の炭酸ガスに対する反応性ならびに脳血流自己調節機序は温存されるが,脳血流は増加し518)20分前後持続する頭蓋内圧上昇作用を示す486)

[使用上の注意点]
 本剤による麻酔時には咽喉頭反射が維持されているので,喉頭痙攣を避けるため咽喉頭に機械的刺激を与えない.覚醒時反応を予防するためにはジアゼパム,ドロペリドール等の前投薬を,激しい覚醒時反応に対しては短時間作用型または超短時間作用型バルビツール酸系薬剤の少量投与,あるいはジアゼパム投与を行うことが望ましい.

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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)