6 レミフェンタニル
[適応]
全身麻酔の導入および維持における鎮痛.海外では小児でも広く使われているが我が国では小児は未承認.
[用量]
単回投与した場合,極度の徐脈を呈することがあるため単回投与を避けるのが望ましい.持続静注は0.25~0.5μg/kg/分の速度で開始し,患者のバイタルや手術侵
襲などに応じて投与量を調節する.全身麻酔薬,ベンゾジアゼピン系薬剤,バルビツール酸系薬剤等中枢神経抑制作用を有する薬剤との併用で麻酔・鎮静等の作用が増強する506).β遮断剤,カルシウム拮抗剤等心抑制作用を有する薬剤との併用で徐脈,血圧低下等の作用が増強することがある507).高い脂溶性を持つため血液脳関門を速やかに通過し効果部位(脳)濃度と血中濃度が1.5~ 10分で平衡に達し作用発現が速やかである.代謝は血液・組織内の非特異的エステラーゼで速やかに行われ,かつ代謝産物は効力が低い.そのため血中の除去半減期は8 ~ 20分と短時間であり,肝・腎機能に左右されない508),509).分布容積が小さく,再分布が早く,排泄半減期が短いため,持続投与時間に限らずcontext-sensitive half-timeは3~ 5 分と一定している486).T1/2はどの年齢群でも成人と同じである510).
[禁忌]
フェンタニル系化合物に過敏症の既往がある患者.本剤は添加物としてグリシンを含むため,硬膜外およびくも膜下への投与はできない.
[副作用]
血圧低下と心拍数の低下があるためアトロピンなどの迷走神経遮断薬やβ刺激薬が必要となることがある.脳幹の呼吸中枢を介し,用量依存性に呼吸抑制を生じる.筋硬直を生じるが筋弛緩薬の投与により緩解する.身体的依存,嘔気・嘔吐,便秘,尿閉,掻痒を生じる.約7~25%の症例にシバリングを生じるとされる511),512).シバリングの薬物治療としてはペチジン,デクスメデトミジン,ケタミンが有効である513),514).
[使用上の注意点]
導入時の筋硬直は換気困難をもたらし,予備力の少ない小児では容易に低酸素血症を起こし非常に危険であるため筋弛緩薬の準備など注意して用いることが望ましい.作用消失が速やかであるため,本剤投与中止前あるいは直後に鎮痛薬を投与し適切な術後疼痛管理を施行する515).BMI25 以上の肥満患者では実体重ではなく標準体重を基準にして投与量を決定することが望ましい516).
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)