5 モルヒネ
[適応]
麻酔時の補助鎮痛薬,術後疼痛等激しい痛みに対する鎮痛.
[用量]
麻酔薬としては通常0.01~ 0.03mg/kgを静注する.術後痛に対して単回静注の場合,小児では0.05 ~ 0.2mg/kg,乳児では0.05mg/kg を投与する.持続静注の場合,小児では10~40μg/kg/時,通常20μg/kg/時で投与する.乳児では5 ~ 15μg/kg/時で持続投与する.
成人では最大鎮痛効果を生じるまでの時間は約15分である500).肝臓により代謝を受けるが,一部の代謝産物はμオピオイド受容体に作用し,強い鎮痛効果を示
す504).大部分がグルクロン酸抱合体として24時間までに約90%が腎臓,約10%が胆道系より排泄される486).
[禁忌]
重篤な呼吸抑制のある患者,気管支喘息発作中の患者,重篤な肝障害のある患者,慢性肺疾患に続発する心不全の患者,痙攣状態(癲癇重積症,破傷風,ストリキニーネ中毒)の患者(脊髄の刺激症状があらわれる),急性アルコール中毒の患者(呼吸抑制を増強する),アヘンアルカロイドに対し過敏症の患者,出血性大腸炎の患者(症状の悪化,治療期間の延長を来たすことがある).
[副作用]
脳幹の呼吸中枢を介し,用量依存性に呼吸数の減少と二酸化炭素に対する感受性低下を特徴とする呼吸抑制を生じる.ナロキソンが拮抗する.直接的な心筋抑制はないが,ヒスタミン遊離による末梢血管拡張,中枢作用による交感神経緊張低下,迷走・副交感神経緊張亢進によると思われる徐脈,用量依存性の血圧低下を起こす486).単回多量投与により筋硬直を生じるが筋弛緩薬の投与により緩解する.身体的依存,嘔気・嘔吐,便秘,尿閉,掻痒,眠気を生じる.長期投与により嘔気・嘔吐,眠気には比較的耐性が生じやすいが,便秘には生じない.Oddi括約筋の痙攣により胆道内圧が上昇する505).
[使用上の注意点]
本剤の呼吸抑制のピークは静注後5~ 10分であるが,鎮痛使用量での分時換気量の減少は約4~ 5時間持続するため投与後は十分な観察を行う.投与が長期にわたる場合,便秘,嘔気・嘔吐を非常に高頻度に合併する.麻痺性イレウスに進展する危険性もあり緩下剤,制吐剤を予防的投与するのが望ましい486).
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)