4 フェンタニル
[適応]
 全身麻酔における鎮痛,局所麻酔における鎮痛の補助,術後疼痛等激しい痛みに対する鎮痛.

[用量]
 麻酔導入時に他の静脈麻酔薬と併用,あるいは吸入麻酔薬による全身麻酔や全静脈麻酔において鎮痛薬として使用される.小児の場合,全身麻酔の導入時には
1 ~ 5μg/kgを静注する.大量フェンタニル麻酔に用いる場合は,通常100μg/kgまで投与できる.全身麻酔の維持には 1~ 5μg/kg を間欠的に静注する.術後痛には,1~ 2μg/kgを緩徐に静注後,1~ 2 μg/kg/時で持続静注する.成人では最大鎮痛効果を生じるまでの時間は約5分である500).作用時間は30分~1時間と短いが,反復投与により進行性に蓄積していく501).成人では大部分が肝で水酸化とN-非アルキル化の代謝を受け不活化され,6%が代謝されずに腎から排泄される502).小児の作用時間は成人より短い.

[禁忌]
 本剤に対し過敏症の既往のある患者.

[副作用]
 心拍数の低下があるためアトロピンなどの迷走神経遮断薬やβ刺激薬が必要となることがある.中等度の平均動脈圧と末梢血管抵抗の減少が小児で報告されてい
503)が,心筋収縮力の抑制はなく血行動態が不安定な患者にも使用できる486).連用により身体的依存を生じるとされる.退薬症状が発現し得るので1/4~1/2量ずつ,1週間以上かけて漸減する486).脳幹の呼吸中枢を介し,容量依存性に呼吸抑制を生じる.この場合ナロキソンが有効である.単回多量投与により筋硬直を生じるが筋弛緩薬の投与により緩解する.痙攣,気管支痙攣を起こすことがある.身体的依存,嘔気・嘔吐,便秘,尿閉,掻痒を生じる.

[使用上の注意点]
 心臓麻酔の導入に用いられることが多いが,導入時の単回多量投与による筋硬直は換気困難をもたらし,予備力の少ない小児では容易に低酸素血症を起こし非常に危険であるため筋弛緩薬の準備など注意して用いることが望ましい.
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)