3 亜酸化窒素
[適応]
 麻酔の導入および維持,鎮痛である.

[用量]
 麻酔導入時は,30%以上の酸素と併用し,維持は本剤50~ 70%の濃度に原則として他の吸入麻酔薬を併用して麻酔を維持する490).強力な鎮痛薬であるが,鎮静・催眠作用は弱く,MACは105~ 110%である491).そのため本剤のみでは全身麻酔薬としては使用できず,吸入麻酔薬のような他の強力な全身麻酔薬の補助薬として使用される.本剤の吸収は,吸収開始直後は大量に(約1000mL/分)吸収されるが時間の経過とともに急速に減少し,20~ 30分でほぼ飽和に達し,以後はごくわずかしか吸収されない486)

[禁忌]
 特になし.

[副作用]
 嘔気・嘔吐,末梢神経障害,長期使用により造血機能障害を起こすことがある.連続吸入は48時間以内にとどめるのが望ましい490).ビタミンB12欠乏症の患者では造血機能障害,神経障害を起こすことがある492)

[使用上の注意点]
 高濃度では心筋抑制作用を持つが,同時に交感神経も刺激するため単独使用では血圧の低下は起こりにくい493),494).本剤の血液/ガス分配係数が0.47と窒素のそれ(0.014)と比較して34倍大きいため体内閉鎖腔内圧上昇作用を持つ.そのため,耳管閉塞,気胸,腸閉塞,気脳症等内腔に窒素を含む閉鎖腔を持つ患者への使用には注意を要する495),496).人工心肺の使用等空気塞栓を起こす可能性のある場合も同様である.本剤の投与終了直後に十分な酸素投与がなされないと拡散性低酸素血症を起こすことがある497).投与終了後には純酸素を5分以上投与する498),499).職業的に数年にわたり本剤に暴露された女性で自然流産率が高いことが報告されている490).麻酔ガス排出システムを整備することが望ましい.助燃性を持つためレーザー手術には使用しない方が望ましい.
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)