項目年齢正常値単位
呼吸数< 1歳
1~3歳4~5歳6~12歳13歳~
30~60
24~40
22~34
18~30
12~16
/分心拍数(覚醒時)
< 3か月3ヶ月~2歳2歳~10歳
10歳>85~205
100~190
60~140
60~100
/分心拍数(睡眠時)< 3か月
3か月~2歳2歳~10歳10歳~
80~160
75~160
60~90
50~90/分
収縮期血圧日齢0~28
1~12か月1~10歳10歳>
<60
<70
<70+(年齢×2)
<90
mmHg腎機能乳幼児
小児1.5~2
1
mL/kg/時
mL/kg/時
心血管系皮膚色
皮膚温
心拍数
リズム
血圧
脈毛
細血管充満圧
末梢臓器機能脳循環
皮膚循環
腎循環
精神状態
尿量
3 小児の病態と臨床的特徴
 ショックの病態生理は,微小循環不全,末梢組織の虚血,バイオマーカー・血管収縮物質・炎症性サイトカイン・一酸化窒素などの分泌と補体の活性化などが複雑に
関与する458).微小循環不全は毛細血管血流の分布異常に特徴づけられ,前毛細血管括約筋と細小動脈の平滑筋収縮をもたらす.その結果,毛細血管床が閉塞し血管内皮の障害が生じ,補体の活性化,血小板や顆粒球の凝集が進行する.

 ショックの初期症状は頻脈と軽度の頻呼吸,毛細血管充満時間のわずかな遅延,血圧や脈拍数の起立に伴う変化,軽度の易刺激性などで,毛細血管充満時間の遅延は交感神経活性の亢進による内因性カテコラミン分泌増多の現れである.代償機構が破綻すると組織が虚血に陥り血管作動性物質と炎症メディエータの放出により微小循環障害が生じて,脳・腎・心血管系などの機能不全症状が認められる.

 乳児では成人に比し心筋収縮力が相対的に弱いため,全身の酸素需要が亢進して心拍出量が増大する時には一回拍出量の増大よりむしろ心拍数の増多に依存する.そのため徐脈時には一回拍出量で代償することがしばしば困難である.逆に頻脈時には,心室充満時間の短縮が心拍出量へ及ぼす影響が比較的少ないため心不全が顕性化しにくい傾向にある458)

 循環動態について心血管系と末梢臓器機能の両者を評価する必要がある(表37).心血管系では,皮膚色・皮膚温・心拍数・リズム・血圧などを,末梢臓器機能で
は脳循環(精神状態)などを評価する.毛細血管充満時間は2秒以下が正常で,延長する場合にはショックが代表的であるが敗血症ショックでは正常であることに注意する.小児のバイタルサインの正常値を表38に示す469)

 小児では一旦心停止に至った場合の救命率が低いため,予防・迅速な心肺蘇生の開始・的確な手技と,地域救急システムへの搬送など救命の連鎖を迅速に行うことが極めて重要である.

 かつて心肺蘇生においては“ABC”(Airway, Breathing/ventilation, and Chest compressionもしくはCirculation)が推奨されたが,2010年AHA Guidelines for CPR and ECC では小児においても“CAB”の順で行うことに変更された445)
表37 小児の二次救命処置(PALS)における循環評価項目(文献469)
表38 小児のバイタルサインなどの正常値(文献459,469より改変して引用)
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)