2 定義
 ショックは急性循環不全の結果,組織需要に見合う必要十分な酸素や栄養を供給できない状態と定義され,進行性に代償期,非代償期を経て臓器の不可逆的障害をもたらす. 低循環血液量性Hypovolemic, 心原性Cardiogenic, 閉塞性Obstructive, 分布性Distributive,解離性Dissociativeの5つに分類される.敗血症性
ショックでは炎症性メディエーターにより心筋収縮力の低下を来たし得るので,時に心原性ショックとしての特徴を有することもある465)

 心原性ショックとは,循環血液量が維持され心拍数が正常ないし増多していても,心筋収縮不全により1回拍出量が低下し心拍出量が減少した状態である.通常,先天性ないし後天性の心疾患が原因で,アシドージス・低酸素血症・低カルシウム血症などの代謝異常を伴う466)

 成人における心原性ショックは「急性心不全により収縮期血圧90mmHg未満もしくは通常より30mmHg以下の血圧低下が見られ,意識障害,乏尿,末梢血管の収縮を伴っている状態」と定義され,低血圧が重要な要因である456).しかし小児は成人に比べ血管収縮と心拍数の増多による代償機構が作用して低血圧に陥りにくく,低血圧が顕在化しないショックもある458),467),468)が,ひとたび低血圧が生じると循環虚脱が急速に進行する.
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)