重篤な心筋収縮不全
・急性心筋炎
・心臓振蘯
・敗血症
・心筋梗塞(川崎病,BWGなど)
順行性血流の機械的狭窄
・大動脈弁狭窄その他の先天性心疾患
  (左心低形成症候群,大動脈縮窄など)
・肥大型心筋症
・左房粘液種
左室心拍出の障害
・僧帽弁検索断裂
・急性大動脈弁閉鎖不全
1 疫学
 心原性ショックでは原因の如何を問わず心拍出量の低下があり,その多くの場合は心筋収縮力の低下が原因である.成人ではその原因の約80%は急性心筋梗塞で,心原性ショックに陥った場合死亡率も50%以上とされる456),457).小児では先天性心疾患,ウイルス性心筋炎,不整脈,心筋症,薬剤性心筋障害,開心術後心合併症,低血糖をはじめとする代謝異常,など原因はさまざまである.動脈管依存性先天性心疾患では,日齢とともに動脈管が収縮傾向を示すとうっ血性心不全が進行し心原性ショックに至る458).重症大動脈弁狭窄など心室流出路の狭窄性病変のほか,心タンポナーデや緊張性気胸も心原性ショックの原因になり得る(表36)

 心肺停止から蘇生に成功した直後には,不安定な循環動態,体循環と肺循環の血管抵抗上昇を伴っており459),次項に定義するような心原性ショックを呈している.

 院外心肺停止の小児例は我が国の研究460)でも米国461)やオランダ462)の研究でも小児人口10万人に対し8.0~9.0人と一致しており,特に1歳未満の乳児に限ればその危険性は数倍高い.小児における院外心肺停止の約3割は心原性とされ460),目撃者bystanderによる心肺蘇生が行われるのはその1/3~ 1/2程度に過ぎず,しかもその1/3強は人工呼吸を行い得ず胸骨圧迫のみであった460),462),463).乳児の心肺停止後の生命予後は不良であるが,1歳以上の小児ではむしろ成人より良好である461)

 院内心肺停止後の予後を検討した前方視的多施設共同研究によれば464),小児は心室細動Vf やpulseless VTの頻度が少なく発見時に心停止であることが多いにも関わらず成人に比し生命予後は2.3倍良好で,神経学的予後も良好であるという.
表36 心原性ショックの原因
文献457より改変して引用
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)