3 小児の病態と臨床的特徴
①病態
発症には,炎症細胞やTリンパ球,炎症性サイトカインなど複雑な免疫応答の関与が考えられている.
②病因
ウイルス感染によるものが多くを占めるが,あらゆる種類の感染性病原体,ある種の薬剤や全身性疾患が原因となり得る.ウイルスのうち心筋親和性の強いピコル
ナウイルスが重要で,コクサッキーB群の頻度が高い.エコー,コクサッキーA群,インフルエンザB群,単純ヘルペス,サイトメガロなどに加え,アデノ,パルボB19なども報告されている.
③症状
あらゆる年齢で発生し,無症状のものから劇症型まで症状は多彩である.刺激伝導系の障害による不整脈(Stokes-Adams発作で発症する完全房室ブロック,異所
性自動能亢進による心室頻拍または上室頻拍)と広汎な心筋細胞障害による収縮不全(心不全やショック)を来たす.心筋炎は小児の突然死の重要な原因で,日本小児循環器学会の希少疾病サーベイランス439)によると平成21年度に発症した患者45例のうち12例が死亡している.
④診察所見
胸部聴診で,洞性頻脈,心音の微弱,奔馬調律を聴取する.完全房室ブロックを伴う例では極度の徐脈となる.
⑤検査所見
心筋逸脱酵素(特にCK-MB)の上昇,ミオシン軽鎖- I,トロポニン-T,トロポニン-I,ミオグロビンや脂肪酸結合蛋白(FABP)の上昇は診断に有効である.
心電図は房室ブロック,ST-T変化,異常Q波,低電位,脚ブロック,心室期外収縮や心室頻拍など多彩な所見が短時間に変化しながら出現する.心エコー図検査では心室や心房の拡大,壁運動の低下,心嚢液の貯留,一過性心筋肥厚,乳頭筋不全による房室弁逆流がみられる.心臓核医学検査では,急性期に67Ga 心筋シンチ,99mTc 心筋シンチでの陽性像,111In-抗ミオシン抗体の集積像,急性期から遠隔期にかけての201Tl心筋シンチでの欠損像が病変部位の診断に有用である.MRI では壁運動が低下した部位で浮腫像と心腔内の血流停滞信号が観察される.ウイルスの分離,ペア血清による4 倍以上の抗体価の変化,ウイルスゲノム検索は有用である.心内膜心筋生検で炎症性細胞の浸潤,心筋細胞の融解や変性,断裂,消失,間質の浮腫や線維化を認めることがある(クラスⅠ).
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)