1)臍周囲径
≧80cm(男女とも)
かつ/または
ウエスト身長比≧0.5
2)血清脂質
TG≧120mg/dl
かつ/または
HDLC<40mg/dl
3)血圧
収縮期血圧≧125mmHg
かつ/または
拡張期血圧≧70mmHg
4)空腹時血糖≧100mg/dl
3 小児期非薬物療法の疾患ー家族性複合型高脂血症,メタボリックシンドローム
①家族性複合型高脂血症
わが国の小児生活習慣病健診に基づいた調査では,すでに学童の0.4%(成人の約半数)で発症していると思われる274).小児例ではIIa型を示すものが多い.高TG血症は肥満度の上昇,年齢経過とともに出現し,small dense LDLを有する症例も増加する.高apoB血症と高脂血症の家族歴が早期診断に有用である266),275).食事療法と肥満の治療,そして生活習慣の改善が効果的である.小児期に動脈硬化性疾患を発症することはなく,薬物療法の必要性は低い.
②メタボリックシンドローム
小児における暫定診断基準が2006年日本小児科学会の分野別ワークショップにおいて提言された(表19).小児に特徴的なのは臍周囲径の判定基準で,身長の変化を考慮しウエスト身長比が採用されている.
わが国の小児での出現頻度は1%前後で,成人と比べかなり少ないが,近年増加していると思われる276).肥満小児を対象とした報告では15%前後に認められる277).肥満が高度になるほど出現頻度は高くなる274).また,年齢経過とともに発症することも多く,中等症以上の肥満小児は注意深く管理されるべきである.
近年,胎児期,乳児期早期の環境が発症の背景因子として注目されている.これは,メタボリックシンドロームを発症した成人には低出生体重児が多いという疫学的
な事実に基づいている.胎内の低栄養状態により,児の代謝特性がプログラミングされ,さらに出生後の急速な発育(catch-up growth)とともに代謝異常が顕性化すると考えられている.概して,臍帯血中の血清脂質は,早産児ではLDL-C値が高く,低出生体重児ではTG値が高くなる.そして,哺乳開始後1ヶ月の新生児の血清脂質であっても在胎週数や出生体重の影響を受けていることが知られている.今後,発症予防の観点からも早産児,低出生体重児の栄養法が再検討されるべきである.
小児期の治療は生活習慣の改善によって行われる.肥満の改善に伴う内臓脂肪の減少が,各診断項目の改善に効果的である.また,肥満小児を対象とした後方視的研究では,魚食習慣と腹囲の減少とに関連性が認められており,治療にも応用できると思われる278).
表19 小児メタボリックシンドロームの診断基準
1)を必須項目として,2),3),4)のうち2つ以上
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)