2 K保持性利尿薬
① スピロノラクトン(商品名 アルダクトンA)(クラス IIa,レベル C)

 遠位尿細管で上皮NaチャネルによりNa が取り込まれ,Kが尿中に排泄される.アルドステロンは遠位尿細管でのNa 再吸収とカリウム尿中分泌を促進する.その
結果,アルドステロンは体内の水分を増やし,血圧を上昇させる働きがある.スピロノラクトンやカンレノ酸はアルドステロン受容体を阻害することで,ナトリウム再吸収とカリウム分泌を減らす.

 心不全ではRAA系が賦活され,アンジオテンシンⅡが過剰に産生される.ACE-I 投与にもかかわらず,投与初期には低下していたアルドステロンの血中濃度が再
び増加してくるブレイクスルー現象が認められることがある189).また,不全心ではレニンやアンジオテンシンⅡのみならずアルドステロンも心臓で産生されるという報告もある190).アルドステロン自体が交感神経を亢進させたり,心筋の線維化をうながす可能性があるので,アルドステロン拮抗薬には,心筋保護作用も期待できる190)-192)

 成人のNYHAⅢ度以上の左室収縮機能不全に基づく重症心不全患者を対象とした大規模試験(RALES)では,スピロノラクトンの併用が全死亡率,心不全死亡率,突然死のいずれをも減少させることが報告された193).ACE-I薬やβ遮断薬等の標準治療薬に抗アルドステロン薬を併用することが生命予後の改善につながることが
証明された.小児心不全におけるスピロノラクトンの効果を検討した研究は小規模なもののみである194)

[用量] 50~ 100mg/日,経口

[小児用量]
 未熟児 1mg/kg/日(1 日1回),
 新生児 1 ~ 2mg/kg/日(分1~ 2)
 乳児/小児 1~ 3mg/kg/日(分2~ 3)

[成人の薬物動態]
 T1/2:1.5時間,効果72時間

[禁忌]
 高カリウム血症,急性腎不全

[副作用]
 高K血症が認められることがある.未熟児で腎石灰化の可能性がある.男性で女性化乳房はしばしば認める.
使用上の注意事項
 腎不全の可能性がある場合には使用しないか少量から開始する.

② カンレノ酸カリウム(商品名 ソルダクトン)(クラスIIa,レベルC)
 抗アルドステロン薬.

[成人用量] 1回 100~200mg/10~20mLに溶解して,ゆっくり静注.600mg/日まで.

③ トリアムテレン(商品名 トリテレン)(クラスIIa,レベルC)

 トリアムテレンはK保持性利尿剤であるが,スピロノラクトンのような全身的な抗アルドステロン作用はない.集合管に作用し,Na+-K+交換を阻害し,K+を保
持したまま利尿作用を表わす.

[用量] 90~ 200 mg/日 (1 日2~ 3分割)

[小児用量] 1 ~ 2 mg/kg/日

[成人の薬物動態] T1/2:4時間,効果 8時間

[禁忌] 高カリウム血症,急性腎不全

[副作用] 高K血症
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)