無有無
Warm and dry
A
Warm and wet
B

Cold and dry
D
Cold and wet
C
低灌流のエビデンス:脈圧狭小,四肢冷感,眠気,
血清ナトリウム値低下,腎機能低下
うっ血のエビデンス:起坐呼吸,高い頚静脈圧,S3 亢進,P2 亢進,ラ音,浮腫,腹水
安静時のうっ血
安静時の低灌流
a 動脈圧
b
動脈圧作動血圧作動血圧
最適血圧最適血圧
至適結合関係収縮能収縮能
c
動脈圧作動血圧最適血圧
収縮能血管拡張薬
陽性変力増強薬
1 心不全治療の概念
 心不全治療の基本概念(図10)は,心血管系の至適結合状態を維持させつつ末梢臓器への血液供給を保証するための作動血圧を維持させることで(図10c),治
療目標は容量負荷の減少,強心薬による心収縮力増強,血管拡張薬による後負荷軽減である112)

 急性非代償性心不全(acute decompensated heart failure, ADHF)の病態判断のために,成人ではForrester 分類が用いられているが,Swan-Ganz カテーテルの挿入など侵襲的検査が必要であり,新生児・乳幼児に対する評価法としては不都合である.Stevensonらによって提唱された概念は身体的所見から分類し,Forrester分類にほぼ対応するので小児領域においても極めて有用である(図11)113).心不全患者はうっ血と低心拍出量の有無により4グループのうちのひとつに分類される.代償されている患者(グループA)が過剰容量負荷になると体循環あるいは肺循環のうっ血徴候をあらわすグループBに移動する.その後,心拍出量が減少するとグループCに入る.利尿薬の使用や体血管抵抗を低下させることによりグループC,Bの患者の大多数はグループAに戻る.しかし,一部の患者は正常な体循環量の維持にも関わらず低灌流が持続し(グループD),強心薬の持続投与量の増加さらには機械的補助循環が必要となる113),114)

 ADHFに対する強心薬(ドパミン,ドブタミン)の急性期効果は明らかであるが,心筋酸素消費量の増加,不整脈誘発の機会となる心拍数の増加を伴うため長期使用
は推奨されていない.新生児期のエピネフリンの長期投与は心筋壊死や高度の拡張能低下を来たすこと,β 受容体のダウンレギュレーションによる薬剤効果の減弱
などの問題があるが,小児のADHFの多くは,先天性心疾患や重症急性心筋炎のように可逆的疾患が原因なので強心薬の短期的使用が適用される.
図10 左室機械効率からみた心不全の補正
図11 急性非代償性心不全の評価法
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)