1 急性心不全の薬物によるサポート
成人では,通常管理に反応しない低灌流および低血圧を伴う急性の心不全増悪に対し強心剤は必要とされる106).現在使用可能な強心剤は細胞内のcAMPレベルを上昇させるという共通経路を通して心筋の収縮性を増大させる.細胞内cAMPの上昇により筋小胞体からのカルシウム放出が増大し興奮収縮連関での収縮力生成が増強する.cAMPの上昇は主に二つの異なる経路で生じる.ひとつはβアドレナリンを介した刺激(産生亢進)でもうひとつはホスホジエステラーゼ(PDE)Ⅲ阻害(分解抑制)である107).
カテコラミンはもっとも強力な強心剤であるが,その効果は陽性変力作用に限定されるものではない.陽性変時作用も有し,血管床や他の臓器にも複雑な影響を及
ぼす.したがって薬剤の選択は心筋のみならず循環動態のさまざまな状態にも依存する.
それぞれの薬剤の詳細については別頁を参照されたい.
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)