肝代謝
代謝酵素
CYP1A2 出生時には活性がほとんどないが,生後1~
3か月から発現が始まり,4~5か月に成人
値となる.
CYP2C9 出生時には活性が低いが,生後急速に活性は
増加し,生後5か月頃までに半数の小児でほ
ぼ成人値となる.
CYP2C19 出生時には活性が低いが,生後5か月以上か
けて緩やかに発現量が増加する.
CYP2D6 出生時にはほとんど活性がなく,生後2週間
までは低いが,3週目以降は遺伝子型に応じ
て活性が発達し,遺伝多型による活性の差異
が明瞭となる.10歳までに成人値に達する.
CYP3A4 出生時には発現量が少ないが,生後1~2年
かけてゆっくりと成人値まで増加する.
CYP3A7 胎生早期から発現するが,生後まもなく発現
が減少し,生後1年までにほとんど消失する.
抱合(転移)代謝酵素
UGT1A1 ヒトでは十分な研究がなされていない
UGT1A4 出生時は成人の50%以下であるが,1.5歳頃
までにほぼ成人値まで発達する
UGT1A6 新生児~乳児期を通じて活性は低い.
UGT2B7 新生児での活性は小児(10歳前後)の20%
程度で,出生後2~6か月で急速に増加する.
硫酸抱合酵素新生児でも成人値の70%前後の活性がある.
N⊖ アセチル
化酵素
出生時から生後2か月までは低い.生後6か
月で遺伝多型の差異が出現し生後1~4年で
成人値となる.
メチル基転移
酵素
出生時にすでに成人値を示す.
腎排泄
糸球体濾過速
度
新生児期には成人の10~20%であるが,1
歳前後で成人値まで成熟する.
尿細管分泌機
能
新生児期には低い。糸球体発達より発達は遅
れるが1歳前後で成人と同じになる.
吸収消化管上皮消化管内腔薬物
CYP344PGPP糖蛋白
遊離形10%
正常低下
血漿蛋白結合
遊離形20%
結合形濃度
遊離形濃度
120
100
80
60
40
20
0
血漿中総(総合形+遊離形)濃度(任意の単位)
1 薬物吸収 absorption
薬物を血管内投与以外の方法で薬物を投与する場合には,薬物の投与部位から血液循環への移動(吸収:absorption)効率は必ずしも100%ではなく,また時間
的に遅れが生じる.
①経口投与 (oral administration, po)
ほとんどの薬物の消化管吸収過程は受動拡散である.消化管粘膜の絨毛形成は既に胎生期に完了している.一方,胃から小腸への排泄運動の未成熟により,新生児と乳児の薬物吸収速度は年長児よりも遅く,最高血中濃度到達時間は遅れる傾向がある.しかし,吸収総量には臨床的に問題となるほどの差はないとされる1).新生児から乳児期において薬物吸収を経時的に評価した研究は少ないが,フェノバルビタール,サルファ剤,ジゴキシンなどの受動的吸収を受ける薬物やキシロースなどの吸収は生後4か月までに成熟する4).新生児では胃酸分泌が未発達なため胃内pHが高いので,イトラコナゾールなどの溶解度が中性pHで著明に低下する.薬物では吸収が遅延または低下する可能性がある.一方,薬物自体が酸性条件下で不安定な薬物(ベンジルペニシリンベンザチン,アンピシリン,ナフシリンなど)は,新生児での消化管吸収率が小児や成人よりも高い5).
薬物の消化管吸収速度は剤型により影響される.錠剤やカプセルの剤型で服用される薬物は,消化管内で崩壊と溶解の過程を経て初めて吸収される.したがって,一般に液体の剤型(シロップ,懸濁剤)からの薬物吸収は固形剤型(錠剤,カプセル剤)より速い.学童期までの小児には誤嚥防止の観点から液剤やドライシロップなどを用いることが多いが薬物吸収の観点からは望ましいことである.
近年,上部消化管粘膜上皮細胞には薬物代謝酵素(CYP3A,CYP1Aなど)や薬物の上皮細胞への吸収あるいは上皮細胞から消化管内腔への排泄を能動的に行う薬物輸送トランスポーター(P糖蛋白;PgPなど)が発現していることが判明した6).これらの発現量の個人差が免疫抑制薬シクロスポリンやタクロリムスを経口投与
する際の生体内利用率(バイオアベイラビリティ)の個人差に影響することが示唆されている(図2)7).PgPの基質としては,他にアジスロマイシン,デキサメタゾン,
ジゴキシン,エリスロマイシン,フェンタニル,イトラコナゾール,モルヒネなど多くの薬物がある.ヒトの消化管PgP活性の小児発達については情報が少ない.また,
消化管粘膜のCYP3A活性がグレープフルーツジュース(GFJ)に含有される成分により阻害されるため多くのCYP3A基質薬のバイオアベイラビリティを増加させる
相互作用を生じる原因となることも注目されている.
②その他の投与経路
経口投与が困難で静脈確保が困難な際などには薬物を筋肉内注射することがある.生理的なpHで溶解度が低い薬物(フェニトイン,ジアゼパムなど)は筋肉内で析
出するので,血管内への吸収速度に大きな個人差が生じることがある.また,循環不全により筋肉血流が減少している病態では吸収速度は低下する.
坐薬による薬物の直腸内投与は,嘔吐や意識障害のために薬物を経口投与できない場合などに便利な投与経路であり,フェノバルビタール,アセトアミノフェン,ア
ミノフィリンなどの薬物で使用されてきた.直腸下部粘膜から吸収された薬物は門脈を経由せず大循環に到達するので,肝臓における初回通過効果を回避する利点もある.しかし,直腸粘膜の表面積は小腸よりも小さく,小児では排便回数が多いため吸収のバラツキの原因となる.したがって,この投与経路は重篤な臨床状況で確実な薬物吸収を期待する際には最適の投与法ではない.アミノフィリンの坐薬投与に伴う吸収率の個人差により効果不足や中毒が生じることが報告されている.一方,ジアゼパムやバルプロ酸の坐薬投与によりてんかんの急性および慢性治療を安全かつ効果的に実施できたとの報告もある.
薬物の経皮投与は皮膚湿疹などの局所治療の他に,経皮吸収による全身投与を目的としたニトログリセリン,ツロブテロールなどの貼付製剤でも使用される.小児の皮膚血流は成人よりもむしろ多いので,一般に小児における薬物の経皮吸収は成人よりも良好である.小児の体重当たりの体表面積は成人より約3倍大きいため,同一皮膚面積から吸収される体重当たりの薬物量は成人よりも多い.アトピー性湿疹などで副腎皮質ステロイド外用薬を長期投与する場合には全身的な副作用の観点から留意が必要である.
また,新生児では皮膚角質層の厚さは成人よりも薄いため経皮的な薬物や化学物質の吸収が良く,局所投与を目的とした殺菌剤(ヘキサクロロフェン,ヨード)やそ
の基剤(プロピレングリコール),さらには薬物(サルファ剤,ジフェンヒドラミン,リドカイン,プロメタジン,ヒドロコルチゾンクリーム)が経皮的に吸収されて中毒症状を生じた報告がある8).
吸入投与による薬物の投与は,気管支喘息の治療でβアドレナリン作動薬やステロイド性抗炎症薬などで広く用いられている.この投与法は薬物を作用部位近傍に
直達させるため全身吸収量は少なく,一般的に全身的な薬理作用は少ない.しかし,高用量で長期に使用された吸入βアドレナリン作動薬による心循環器系副作用
やステロイド性薬による副腎機能抑制などの副作用が生じることがある.これらの薬物の上気道粘膜および経下気道的な吸収は気管支組織および呼吸機能の発達により影響されると推測されるが,十分研究されていない.
③分布 (distribution)
投与部位から吸収された薬物は主に血液循環に移行し全身組織に分布する.このとき,薬物が血液濃度と同じ濃度で一様に分布していると仮定して計算した値が分布容積(volume of distribution: Vd) である. もちろん,薬物は血液と同じ濃度で組織中に分布するわけではないので,この値は見かけ上の値であり,何ら実在の生理的容積を表すものではない.しかし,この値は薬物の初回投与などで投与直後に治療効果に基づいて設定した薬物血中濃度を得るために必要となる負荷投与量を推測する際に有用である.
必要な薬物投与量 = Vd×Δ血中濃度
ここでΔ血中濃度は投与前と投与後の血中濃度増加値である.この式は初回投与でも経過中の追加投与の場合にも使用できる.
新生児および乳児では成人よりも体重当たりの体内水分量・細胞外水分量が多いため1),アミノグリコシド系抗菌薬のように比較的水溶性が高く血漿蛋白結合率の低い薬物の体重当たりの分布容積は成人よりも大きい.したがって,それらの薬物では小児薬用量を体重当たりの成人用量から換算して投与すると血中濃度が治療域を下回ることがある9).一方,脂溶性が高い薬物の体重当たりの分布容積は小児と成人で大きな差異はない.
血漿中の薬物は遊離型と血漿蛋白との結合形が可逆的な平衡状態にある.酸性薬物(フェニトインなど)は主としてアルブミンに,塩基性薬物(リドカイン,ジソピ
ラミドなど)は主としてα 1- 酸性糖蛋白(AAG)に結合する.新生児では1歳児と比較しても血清アルブミン濃度は30%前後,AAG濃度は50%前後低いので蛋白結
合率が高い薬物の遊離型分率は増加している1).
血管内皮を通過して組織に自由し,作用部位(酵素,蛋白など)に到達できるのは遊離型薬物であるので,薬物の効果は血液中の遊離型薬物濃度が関係する.血漿蛋白結合率が高く(典型的には> 90%),分布容積が小さい薬物では,体内の薬物の大部分が血液中に存在している.このような薬物の結合率が低下(例えば90%から80%)すると,遊離型薬物の分率は10%から20%へと倍増し,組織に分布できる遊離型薬物が増加する.このため,薬物の血中総(遊離型+結合型)濃度は蛋白結合が正常な場合より低くなる.しかし,効果に関係する遊離型薬物濃度は,遊離型分率の増加と総薬物濃度薬物の低下が相殺されるため,蛋白結合率が正常な場合と大きな差はなくなる.さらに,薬物投与から時間が経過すると,血液中の遊離型薬物を除去する肝臓や腎臓の浄化能力(クリアランス)が正常な場合は,分布の変化により増加した血液中の遊離型薬物を正常化させるので薬理効果への影響はさらに少なくなる.この現象は薬物蛋白結合部位における併用薬との相互作用の場合でも同様である.
ただし,新生児・乳児では後述するように肝臓や腎臓の遊離型薬物に対するクリアランス(酵素活性自体)が未発達であるため,蛋白結合率の低下による遊離型薬物濃度の増加が薬物クリアランスにより迅速かつ充分に正常化できず薬理効果の増強や毒性発現が生じるものと考えられる.したがって,新生児では生理的に増加している遊離型薬物濃度をさらに増加させるような蛋白結合部位での相互作用を持つ薬物の投与は避けるべきである.内因性ビリルビンはアルブミン結合物質であるため新生児黄疸にサルファ剤を投与すると核黄疸リスクが増加するため禁忌となっている.
臨床で日常的に実施されている薬物血中濃度モニタリング(TDM)ではほとんどの場合総(結合型+遊離型)濃度を測定するので,血液中の薬物結合蛋白濃度が低下している新生児や低蛋白血症の小児では遊離形分率の増加を考慮して(図3),報告された測定値を蛋白濃度が正常な場合の測定値に換算して解釈する必要がある.
④代謝(metabolism)
循環器系薬物は比較的脂溶性が高く,肝臓で代謝を受け不活化されるものが多いので肝臓の薬物クリアランスの発達は薬物療法を考える上で重要である.繰り返し投与により定常状態(蓄積が完了した時点)に到達した薬物の血中濃度(全身薬物量)は投与量と全身クリアランスにより決まる.その全身クリアランスは,単位肝組織当たりの薬物代謝酵素活性(発現量)と臓器重量の積により決まる.したがって,小児の薬物代謝クリアランスのontogenyは主として新生児から2歳ころまでの肝細胞当たりの酵素発現量が成人値に向かって増加する時期(質的成長期)と,それ以後の主として臓器サイズ発達により全身クリアランスが増加する時期(量的成長期)に分けて論じる必要がある.ただし,現時点では両期の境界を異なる酵素分子種に対して明確に設定することはできていない.以下に薬物代謝酵素の発達変化を第1相反応(酸化反応が主体)と第2相反応(転移あるいは抱合反応が主体)に分けて論じ,その概要は表1にまとめた.
1)新生児から2歳前後までの質的成長期
①薬物酸化代謝酵素
ヒトの薬物酸化代謝酵素で最も重要なものは3種類のシトクロムP450(CYP) ファミリーである(CYP1,CYP2, CYP3).CYP3 群では,CYP3A7 が胎生早期から
に発現しているが,生後まもなくその発現は減少し,生後1年までにほとんど検出されなくなる.一方,成人型のCYP3A4 は出生時には発現量が少ないが,生後1~
2年後にかけて発現量が増加する10).CYP3A4活性の指標であるミダゾラムの全身クリアランスは新生児から乳児期にかけて7 から8倍増加することが明らかとなっている11).
CYP2C群の主要な分子種はCYP2C9,CYP2C19,CYP2C8 である.フェニトイン,ワルファリン,スルホニル尿素薬,酸性非ステロイド性消炎鎮痛薬(ジクロフ
ェナクなど)などを代謝するCYP2C9 の発現量は胎生25週ころから発現し,個人差は大きいものの出生後急速に増加し,生後5か月ころまでに半数の小児では成人
値に到達する12).一方,プロトンポンプ阻害薬,クロピドグレルなどの代謝に関係するCYP2C19 は,生後5か月以上かけて緩やかに発現量が増加する12).一方,テオフィリンおよびカフェインを基質とするCYP1A2 は発現が遅く,生後1から3か月から発現が始まる13).
CYP2D6 は抗不整脈薬(フレカイニドなど),β 遮断薬(メトプロロールなど)などの循環器薬物,抗うつ薬,抗精神病薬,抗てんかん薬,コデインなどの中枢神経作
用薬の代謝に関係する.出生時にはほとんど活性がなく,生後2週間までは低いが,3週目以降に活性が発達し10歳までに成人値に達する14).
②抱合代謝酵素
抱合酵素は酸化代謝酵素よりも分子種が多い.代表的な抱合酵素であるグルクロン酸転移酵素(UGT)は遺伝子構造からUGT1A とUGT2Bのサブファミリーに分
類される.UGT1A群はさらに9 分子種に,UGT2B群は7分子種に分類される.
生後数日から1週間程度に生理的高ビリルビン血症が出現するのは,ビリルビンを抱合体謝するUGT1A1 は胎生期にほとんど活性がなく,出生時には極めて低値で,出生後急速に増加するためである.新生児にUGTの基質である抗菌薬のクロラムフェニコールを投与すると高頻度でGray症候群と呼ばれる重篤な中毒反応が生じたのは新生児期のUGTが低活性であるためである.クロラムフェニコールの代謝は生後6 か月で成人値に達する15).出生時の肝組織UGT1A4 活性は成人の
50%以下であるが1.5歳頃までにほぼ成人値まで発達する16).UGT1A6 活性は基質であるアセトアミノフェンのクリアランスで評価すると,新生児,乳児を通じて低い.抗がん剤イリノカテンなどの代謝に関係するUGT1A1 の発達変化についてはヒト肝臓試料での活性研究があるが17),in vivoでの全身クリアランスについては情報がない.一方,UGT2B7 はモルヒネの代謝に関係する.モルヒネの全身クリアランスで評価した新生児のUGT2B7 活性は10歳前後の小児の10~ 20%程度に
過ぎず,出生後2 ~ 6か月で急速に増加することが知られている18).硫酸抱合酵素の活性は新生児でも十分に発現しているとされる.
2)幼児期以降の量的発達期
主として学童から思春期の小児を対象とした薬物動態研究(ワルファリン,ジソピラミド,テオフィリン,カルバマゼピンなど)では体重当たりに換算した小児薬用
量が対応する成人量を2倍程度上回ることが知られている1).この現象は,主として薬物の体内動態に関わる臓器(肝臓,腎臓)重量と体重の比率が小児では成人より大きいことに由来する見かけの現象である.画像検査で計測した肝容積で標準化したいくつかの典型的な肝代謝型薬物の小児クリアランス値は成人値とほとんど差がない19,20).
比較生物学的な経験的アロメトリー原理によればエネルギーを要する生命活動(薬物代謝など)の同種または異種動物間での差異はサイズ(体重)の3/4乗に比例する.アロメトリー原理を用いた生理的薬物動態モデルを小児薬用量推定に利用する試みが盛んに行われているが,現時点ではまだ研究段階である21).アロメトリー原理は身体サイズは異なるが臓器機能は成熟した小児期の薬物クリアランス予測を目的とした理論であるので,新生児や乳児のように肝細胞当たりの薬物代謝酵素活性が発達中の時期には適応できない.体重の3/4乗の成長曲線は体表面積のそれと良く一致している.
⑤腎排泄(renal elimination)
腎臓組織におけるネフロンの形成は胎生期の早期から始まり,36週にはほぼ完成されるとされる.さらに生後2週間の間に急速に発達し,8から12か月で完成する.
このため,糸球体濾過率(GFR)は,未熟児では0.6~0.8mL/min/1.73m2であるが,満期産の新生児では2~4mL/min/1.73m2に増加し,1 歳前後には体表面積で標準化した値(mL/min/1.73m2)は成人とほぼ同等となる1).尿細管分泌機能も新生児期には未熟であるが糸球体濾過機能より遅れて生後1年前後に成熟する.このような腎機能の発達変化は,主に腎糸球体濾過により排泄される水溶性薬物(アミノグリコシド系薬,ファモチジン,ラニチジン等)の動態の発達に大きな影響を与える1).例えば,ゲンタマイシンの消失半減期は,未熟児では36~ 48時間,新生児では24時間と,成人の2 ~4時間に比べて著明に延長している22).
尿細管分泌機能には各種の有機イオントランスポーターが関係しており,薬物によってはそのクリアランスが腎糸球体濾過速度を上回ることもある.尿細管分泌クリ
アランスの発達は腎糸球体濾過のそれよりも遅れる.有機アニオン・トランスポーターの発達変化はパラアミノ馬尿酸(PAH)やブメタニド,フロセミドの腎クリアランスで評価されている.新生児の体重当たりのブメタニド全身クリアランスは成人の20%であるが,新生児から乳児期に3倍以上の発達変化が観察される23).同様の変化がフロセミド,アンピシリン,ベンジルペニシリンなどで観察されている24).腎尿細管の有機カチオントランスポーターやPgP活性の発達変化については未だに情報が少ない.
⑥小児の薬物感受性の成人との差異に関する知見
薬力学(PD)のontogenyについてはPKよりも情報がはるかに少ない.新生児・乳児ではシクロスポリンによる免疫抑制作用,ワルファリンによる抗凝固作用,ラ
ンソプラゾールによる胃酸分泌抑制効果における感受性がより年長の小児や成人よりも高いとする報告がある1),8),24).また,結核の化学療法やバルプロ酸による肝障害の出現頻度は小児において成人よりも高いことなど副作用頻度にも成人との差異が報告されている1),8).従来の研究では,薬物応答性の発達変化は「投与量─効果関係」により評価されることが多かったので,今後は「血中濃度─効果関係」に基づいて評価し,PDのontogenyを検討する必要がある.
図2 消化管粘膜上皮におけるCYP3A4とP糖蛋白の共発現と協同的な消化管での初回通過効果
図3 薬物の血漿蛋白結合濃度の低下に伴う血漿遊離型分率の増加と総および遊離型薬物の変化
表1 新生児・乳児期の単位臓器重量当たり肝代謝および腎排泄活性の個体発生(ontogeny)
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)