重篤な有害反応一般的な用法用量コメント
低血圧(特に初回投与時)
腎機能障害頻脈脱毛症持続する乾性咳嗽
経口で0.1mg/kg/日より開始
反応に応じて0.5~1mg/kg/日まで増量可
最大1日投与量 40mgACE阻害薬
心不全に対して通常はループ利尿薬と合わせて使用する
カリウム保持性利尿薬と併用しない
初回導入時は注意深い観察を要する
通常は入院とし,血圧と腎機能をモニタリングする
低血圧(特に初回投与時)
低カリウム血症
0.5mg/kg 1日1回内服2mg/kg 1日1回まで増量可
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
ACE阻害薬と同様の薬効であるが,ACE阻害薬に特徴的な乾性咳嗽を認めない
腎機能障害,肝機能障害を認める場合は投与量を減量する
低血圧のリスクがあるため導入時に注意を要する
各種不整脈低血圧
30~45μg/kg/時にて持続静注陽性変力作用と末梢血管拡張作用を併せ持つPDEⅢ阻害薬
低血圧のない場合,最初の1時間で50~75μg/kgを点滴静注
腎不全時は投与量を減量する 短期間使用に限る高血圧
強い血管収縮および末梢虚血
各種不整脈
20~100ng/kg/分にて持続静注
最大1μg/kg/分まで増量可
徐脈心不全房室ブロック末梢血管収縮易疲労感
ファロー四徴症:15~20μg/kgを静注,心電図モニター下で100~200 μg/kgまでゆっくり増量可
不整脈:0.25~0.5 mg/kg 1日3回内服,1mg/kg 1日3回まで増量可
心電図モニター下で10~50μg/kgを緩徐に静脈
ベラパミルと併用禁忌 腎機能低下,肝機能低下時は投与量を減量する
呼吸困難頭痛視覚障害持続勃起症
1回0.5mg/kgを4~6時間ごとに内服
反応に応じて最大2mg/kgを4時間ごと投与まで増量可
肝機能障害,腎機能障害時は投与量を減量する
心臓手術後の肺高血圧症や一酸化窒素吸入療法の離脱にも使用される
徐脈心不全気管支れん縮房室ブロック不整脈QT 時間延長
Torsades de pointes
1mg/kg 1日2回内服,必要に応じて3~4日ごとに増量し,4mg/kg 1日2回内服まで増量可
(最大1日投与量160mg)
QT 時間のモニタリングを行う
QT 延長を引き起こす他の薬剤との併用を避ける
有効血中濃度は0.04~2.0 mg/L
高カリウム血症低ナトリウム血症肝機能障害女性化乳房骨軟化症
0.5~1.5mg/kg 1日3回内服主にループ利尿薬とともに用いられる
ACE阻害薬と同時に投与するべきではない
薬剤(一般名) 薬剤(商品名) 適応禁忌Lisinopril ゼストリル,ロンゲス心不全
高血圧腎機能障害腎血管障害大動脈縮窄症左室流出路狭窄左室流入路狭窄
Losartan ニューロタン心不全高血圧腎機能障害
腎血管障害大動脈縮窄症左室流出路狭窄左室流入路狭窄
Milrinone ミルリーラ心不全
低心拍出量ショック腎不全低血圧
Norepinephrine(Noradrenaline)
ノルアドレナリン重篤な血管拡張に伴う二次性低血圧高血圧Propranolol インデラル高血圧
上室頻拍心室頻拍
ファロー四徴症における無酸素発作
気管支喘息房室ブロック低血圧
心機能低下
Sildenafil レバチオ肺高血圧低血圧:冠動脈疾患Sotalol ソタコール心房粗動
上室頻拍
心室頻拍
気管支喘息
房室ブロック
低血圧
心機能低下
低カリウム血症
低マグネシウム血症
QT 延長
Spironolactone アルダクトンA カリウム保持性利尿薬
(抗アルドステロン薬)
高カリウム血症
低ナトリウム血症
重篤な有害反応一般的な用法用量コメント
低血圧頻脈気管支れん縮
2.5mg/kg 1日2回内服
12歳以上:100~200mg 1日3回内服
ジピリダモールは虚血性心疾患やステロイド抵抗性ネフローゼに対しても用いられる
抗血小板作用はアスピリンと相乗的に作用すると考えられる
頻脈低血圧2~20μg/kg/分 静脈内持続投与
高血圧頻脈各種不整脈
静注 2~20μg/kg/分 静脈内持続投与臨床診療において低用量における効果的な血管拡張作
用を有するというエビデンスは乏しい
低血圧(特に初回投与時)腎機能障害頻脈レイノー症状
Stevens-Johnson症候群脱毛症
筋れん縮持続する乾性咳嗽
経口で0.1mg/kg/日より開始
反応に応じて1mg/kg/日まで増量可ACE阻害薬
心不全に対して通常はループ利尿薬と合わせて使用するカ
リウム保持性利尿薬と併用しない
初回導入時は注意深い観察を要する
通常は入院とし,血圧と腎機能をモニタリングする
頻脈高血圧各種不整脈静注 0.1μg/kg/分1.5μg/kg/分まで増量可
徐脈心不全気管支れん縮房室ブロック
初期量:500μg/kg 1~2分かけて緩徐に静注
その後25~50μg/kg/分で静脈内持続投与
可抵抗例には最大200 μg/kg/分まで増量可
心選択性の高いβ遮断薬
低血圧や徐脈を生じた際には減量
ファロー四微症の重篤な無酸素発作を改善させるため
には高用量が必要(我が国では使用経験なし)
致死性不整脈の誘発(特に先天性心疾患患者)
心機能低下(特にβ遮断薬やカルシウム拮抗薬との併用時)
経口2~3mg/kg 1日2~3回血中濃度により調整静注
1回投与量 2mg/kg
0.1~0.25mg/kg/時を不整脈消失まで(最大1日投与量 600mg)
緩徐静注時は心電図のモニタリングを行う
24時間以上静注を行う場合は血中濃度をモニタリングする
(有効血中濃度は200~800μg/L)
低ナトリウム血症低カリウム血症低マグネシウム血症腎石灰沈着低血圧
難聴(急速静注時)経口
0.5~2mg/kg 1日2~3回(最大1日投与量 12mg/kgまたは80mg/日のいずれか少ないほう)
静注0.5~1mg/kg 1日4回まで,または0.1~2mg/kg/時の持続静注
乏尿時はさらに高用量を必要とし,尿量に応じで漸増する
出血(特に頭蓋内)
腎機能障害壊死性腸炎
10mg/kg 緩徐に静注
2回目(24時間後),3回目(48時間後)の用量は5mg/kg
腎機能障害時は減量する肝機能のモニタリングが必要
頭蓋内出血を含む出血
乏尿,無尿体液貯留
30分以上かけて点滴静注
生後48時間未満の新生児:200μg/回,12
~24時間あけて100μg/回を2回まで追加投与
生後2~7日未満の新生児:200μg/回,12
~24時間あけて200μg/回を2回まで追加投与
生後7日以上の新生児:200μg/回,12~24時間あけて250μg/回を2回まで追加投与
尿量のモニタリングを行い,2回目,3回目の投与は尿量の回復を待ってから行う
インドメタシンは心膜切開後症候群の抗炎症薬として用いられる
低血圧頻脈各種不整脈
0.02μg/kg/分,最大0.5μg/kg/分まで
(新生児は最大0.2μg/kg/分まで)
中枢神経症状呼吸抑制低血圧徐脈
0.5~1mg/kgを1分以上かけて静脈内投与5分間隔で最大3mg/kgまで繰り返し投与可
続けて1~3mg/kg/分にて持続静注投与中は心電図モニタリングを行う
肝機能障害,腎機能障害を認める場合は投与量を減量する
薬剤(一般名) 薬剤(商品名) 適応禁忌Dipyridamole アンギナール
ペルサンチン
低用量アスピリンに代わる抗血小板作用による血栓予防
心不全大動脈弁狭窄症
Dobutamine ドブトレックス心拍出量低下時の心収縮増強作用左室流出路狭窄Dopamine イノバン低血圧
低心拍出量頻脈不整脈
Enalapril レニベース心不全
高血圧腎不全腎血管障害大動脈縮窄症左室流出路狭窄左室流入路狭窄
Epinehrine(Adrenaline) ボスミン血圧低下高血圧Esmolol ブレビブロック上室性頻脈性不整脈や高血圧への緊急治療
ファロー四微症の無酸素発作
(我が国では未承認)
気管支喘息房室ブロック低血圧心機能低下
Flecainide タンボコール心室不整脈
WPW症候群における不整脈
房室回帰頻拍心不全房室ブロック低カリウム血症Furosemide ラシックス心不全肺うっ血
高血圧症低カリウム血症低血圧
Ibuprofen ブルフェン早期産児の動脈管開存症(我が国では新生児への適応なし)
肝機能障害肺高血圧出血壊死性腸炎感染
Indomethacin インダシン早期産児の動脈管開存症腎機能低下
感染症出血(特に頭蓋内)壊死性腸炎
Isoprenaline プロタノール徐脈完全房室ブロック
低血圧Lidocaine キシロカイン心室細動
心室頻拍房室ブロック心機能低下肝不全腎不全
重篤な有害反応一般的な用法用量コメント
胸痛呼吸困難気管支れん縮高度徐脈
0.1mg/kg/回を急速静注
最大投与量
 新生児:0.3mg/kg/回
 乳児以降:0.5mg/kg/回
急速静注に心電図によるモニタリングと記録は必須
急速静注は心電図に変化が生じるまで徐々に用量を増加させて2分毎に繰り返すことが可能
無呼吸多呼吸低血圧発熱
長管骨の骨膜肥厚
壊死性腸炎
10ng/kg/分にて点滴静注開始
反応に応じて50ng/kg/分まで増量可能
心拍,呼吸,体温のモニタリングが必要
無呼吸に対して人工呼吸管理を要することあり
低ナトリウム血症高カリウム血症低血圧
経口200μg/kg,1日2回最大1日量20mg
サイアザイドやループ利尿薬との併用により利尿効果減弱
徐脈,Torsades de pointes
甲状腺機能障害
間質性肺炎,肺線維症肺胞出血,ARDS
肝機能障害,肝炎角膜色素沈着
日光過敏,皮膚脱色神経障害,貧血
SIADH経口
 初期量:5mg/kg 1日2~3回,7日間投与後に維持量に減量
 維持量:5mg/kg 1日1回,または血中濃度を測定し調節する
静注
 最初の4時間は25μg/kg/分で投与,その後5~15μg/kg/分に減量
 最大1日投与量 1,200mg
副作用の発現を抑えるため長期投与は避けるべき肝機能,甲状腺機能,間質性肺炎,不整脈の悪化,除
脈,視力の注意深いモニタリングが必要
日光過敏と皮膚脱色は重症であり,日焼け止めが必要静注投与時は心拍数をモニタリングし,必要に応じて
投与量を調整
アミオダロンおよび活性代謝物の有効血中濃度:0.6~2.5mg/L
ライ症候群出血(特に消化管)
気管支れん縮
低用量:5mg/kg 1日1回(最大75mg)
高用量:20~25mg/kg 1日4回をおよそ14日間,その後低用量に減量
高用量の投与法はリウマチ熱や心膜切開後症候群にも用いられる
徐脈心不全気管れん縮房室ブロック末梢血管収縮倦怠感
1~2mg/kg 1日1回内服最大1日投与量 100mg
腎機能・肝機能障害を有する場合は少量より開始する
低血圧(特に初回投与時)腎機能障害頻脈
日光過敏
持続する乾性咳嗽
0.1mg/kg 1日3回内服より開始1mg/kg 1日3回内服まで増量可
ACE阻害薬
心不全に対して通常はループ利尿薬と合わせて使用するカリウム保持性利尿薬と併用しない
初回導入時は注意深い観察を要する
通常は入院とし,血圧と腎機能をモニタリングする
徐脈心不全気管支れん縮房室ブロック末梢血管収縮倦怠感
0.05mg/kg 1日2回内服(最大3.125mg/日まで)より開始
2週間ごとに増量し,最終的に0.35mg/kg
1日2回内服(最大1日投与量25mg)まで増量可
利尿剤,ACE阻害薬に引き続き追加する第三選択の慢性心不全治療薬
小児における長期的な有用性に関するエビデンスはまだない
出血好中球減少
1mg/kg 1日1回内服(最大1日投与量75mg) アスピリンによる治療後の第二選択薬
食欲不振腹痛房室ブロック各種不整脈経口
新生児~5歳:10μg/kg/日5~10歳:6μg/kg/日 最大投与量250μg/日
緊急時には最初の24時間で急速飽和(digitalization)を要する
早産児,腎不全症例では投与量を減量
心不全における有用性は限定的で第一選択薬として用いられることはまれである
静脈投与はあまり行われない
ジゴシンの有効血中濃度は0.8~2.0μg/L
無呼吸多呼吸低血圧発熱
長管骨の骨膜肥厚
壊死性腸炎
5ng/kg/分にて点滴静注開始
反応に応じて20ng/kg/分まで増量可
心拍,呼吸,体温のモニタリングが必要
無呼吸に対して人工呼吸管理を要することあり
薬剤(一般名) 薬剤(商品名) 適応禁忌Adenosine アデホス,ATP 不整脈の診断
上室不整脈の治療
房室ブロック
気管支喘息
Alprostadil
(prostaglandin E1)
プロスタンディン新生児における動脈管開存の維持Amiloride 我が国に認可薬なしカリウム保持性の利尿薬高カリウム血症
腎不全
Amiodarone アンカロン上室不整脈
心室不整脈
徐脈
房室ブロック
低血圧
Aspirin アスピリン低用量:抗血小板作用による血栓予防
高用量:川崎病に対する抗炎症
ライ症候群合併の危険性を有するウ
イルス感染症
出血性消化性潰瘍
Atenolol テノーミン高血圧
上室頻脈
心室頻脈
気管支喘息
房室ブロック
低血圧
心機能低下
Captopril カプトリル心不全
高血圧
腎機能障害
腎血管障害
大動脈縮窄症
左室流出路狭窄
左室流入路狭窄
Carvedilol アーチスト心不全気管支喘息
房室ブロック
心機能低下
Clopidogrel プラビックス低用量アスピリンに代わる抗血小板作用に
よる血栓予防
Digoxin ジゴシン上室不整脈
心不全
房室ブロック
腎不全
WPW症候群
心室頻脈
Dinoprostone
(Prostagrandin E2)
プロスタンジンE2 新生児における動脈管の開存
(我が国では子宮収縮薬?)

ⅩⅤ 小児循環器用薬剤一覧

おわりに

 小児期の新薬の臨床試験は限られており,世界的にも臨床評価ガイドラインが揃っていないため質の高いエビデンスが少ない.そのため成人に適応があっても,小児の特殊性を理由に開発が行われていない薬剤が多い.表52に国際的に使用されている心血管系の薬剤の処方集についてまとめた.まだ我が国で小児に承認されていないものも一部あるが,世界的に認められている薬剤が多く含まれている.この表は,小児循環器領域では基本であるAndersonのTextbook690)から引用したものである.用量設定は概ね新生児から10歳までを対象にしたものである.これはあくまで目安であり,個々の症例の身体発育,未熟性,人種差,腎機能や肝機能,脱水,発熱の有無,疾患の重症度,合併症,併用薬などにより適宜,担当医がRisk/Benefitを考慮して使用すべきものである.
表52 小児期の心疾患に頻用される薬剤
付記:保険償還対象薬の追加

 このガイドラインを作成中に,ワルファリン(血栓塞栓症の予防),フレカイニド,プロプラノロール(共に頻脈性不整脈)アムロジピン,エナラプリル,リシノプリル,バルサルタン(共に高血圧)が小児領域で承認された.また厚生労働省保険局から,添付文書の使用上の注意には「小児に対する安全性は確立していない」とい
う記載はあるが,「保険診療において償還対象」と通知のあった医薬品は以下のとおりである.リドカイン(頻脈性不整脈),L-イソプラナリン(徐脈発作),ドパミン塩酸塩(急性循環不全),カンレノ酸カリウム(高アルドステロン症に関連する疾患で経口困難時),カプトプリル(高血圧),ジピリダモール(川崎病冠動脈後遺症),ニフェジピン(高血圧),(以上23年9月28日付),塩酸オルプリノン,ミルリノン(共に急性心不全),デノパミン(慢性心不全),アテノロール(頻脈性不整脈:洞性頻脈,期外収縮),塩酸ピルジカイニド(頻脈性不整脈),塩酸メキシレチン(頻脈性不整脈:心室性),塩酸ランジオロール(手術時,手術後の頻脈性不整脈に対する緊急処置),カルベジロール(慢性心不全)(以上24年9 月25日付)
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)