2 定義
 高脂血症とは血清脂質を構成するコレステロール,トリグリセライド(TG)のいずれか,ないし両方が増加した状態である.「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」では,HDLコレステロール(HDL-C)が低い場合も加えて脂質異常症と命名した.これは高コレステロール血症(高LDL-C血症)が狭心症,心筋梗塞などの冠動脈疾患(CAD)の重要な危険因子であること,HDL-CはCADの負の危険因子であることがこれまでの国内外の成人疫学研究において示されてきたからである.TGに関しては,血清TG が高くなるとリポ蛋白の質的異常としてsmall dense LDLの増加(小児でも見られる)266),レムナントの増加,また血液凝固線溶系の異常やHDL-Cの低下といった動脈硬化に促進的な変化が生じるので,成人では,CAD の重要な危険因子であると考えられている.しかし,小児ではリポプロテインリパーゼ(LPL)活性が欠損する高カイロミクロン血症のように高TGであっても,心血管病を発症しないので,高TGのための膵炎の危険性がなければフィブラート系の薬剤は通常用いられない.
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)