作用発現時間最大血中濃度血中半減期主な副作用注意事項・禁忌
シグマート10mg単回投与時:0.55±0.12時間
シグマート10mg単回投与時:152.3±29.1 ng/mL
シグマート10mg単回投与時:0.75時間
頭痛(3.6%),嘔気・嘔吐(0.44 %), めまい(0.15%),倦怠感(0.12%)
PDE5阻害作用を有する薬剤を投与中の患者
50mg服薬時:3.8±0.4時間
50mg服薬時:159.8±54.6 ng/mL
50mg服薬時:10.8±2.7時間
徐脈(1.57%),心拍数心リズム障害(1.69%),めまいなどの中枢神経障害(0.84%),倦怠感(0.65%)本剤に過敏症の既往がある場合,糖尿病性ケトアシドーシス・代謝性アシドーシスがある場合,心原性ショックの患者,肺高血圧による右心不全がある患者,低血圧の患者,重度の末梢循環障害のある患者,未治療の褐色細胞腫の患者
5mg単回投与時:3.1±0.4時間
5mg単回投与時:23.7±1.0ng/mL
5mg単回投与時:8.6±0.3時間
徐脈(1.01%),めまい(0.2%),倦怠感(0.19%),肝機能障害(0.18%),ふらつき(0.14%)
高度の徐脈・房室ブロック
(Ⅱ,Ⅲ度)・洞房ブロック・洞不全症候群の患者,糖尿病性ケトアシドーシス・代謝性アシドーシスがある患者,心原性ショックの患者,肺高血
圧による右心不全がある患者,うっ血性心不全のある患者,妊娠またはその可能性がある場合
40mg単回投与:1.9時間
40mg単回投与:41.8ng/mL
40mg単回投与:2.8時間
徐脈(1.2%),めまい・ふらつき(0.59%),倦怠感(0.31%),悪心・嘔吐(0.26%),頭痛(0.25%),肝機能障害(0.15%)
同上
5mg単回投与:0.6±0.1時間
5mg単回投与:13.5±2.3 ng/mL
5mg単回投与:1.95±0.39時間
めまい(1.6%),全身倦怠感(0.8%),眠気(0.8%),頭痛(0.6%),徐脈(0.6%),喘息様症状(0.2%)
気管支喘息・気管支痙攣のある患者ある患者,糖尿病性ケトアシドーシス・代謝性アシ
ドーシスがある患者,心原性
ショックの患者,高度の徐脈,
非代償性の心不全患者,強心
薬又は血管拡張薬を静脈内に
投与する必要のある心不全患
者,肺高血圧による右心不全
がある患者,うっ血性心不全
のある患者,妊娠またはその
可能性がある場合
一般名商品名作用機序剤形適応投与経路・用量・
用法ニコランジルシグマート
血管平滑筋細胞の
ATP 感受性K+チャ
ンネルを活性化し冠
動脈拡張作用と抗冠
攣縮作用を発揮する
錠剤,注射剤狭心症1 回5mg を1 日3 回経口投与(成人)
アテノロールテノーミンβ受容体遮断薬錠剤本態性高血圧症,狭
心症,頻脈性不整脈
狭心症:1回50mg
を1日1回経口投与(成人)
ビソプロロールメインテート同上錠剤
本態性高血圧症,狭心症,心室性期外収縮
狭心症:1回5mgを
1日1回経口投与(成人)
メトプロロールセロケン同上錠剤本態性高血圧症,狭
心症,頻脈性不整脈
狭心症:1日60~120mgを2~3回に分割経口投与(成人)
カルベジロールアーチストβ並びにα1受容体
遮断薬錠剤虚血性心疾患,慢性心不全
虚血性心疾患:1回
1.25mg を1 日2 回
食後経口投与より開始し,段階的に増量する(成
人)
作用発現時間最大血中濃度血中半減期主な副作用注意事項・禁忌
硝酸イソソルビド
2.5mg(2回口腔内噴霧)噴霧時:7.7±0.9分
硝酸イソソルビド5mg経口:25.6分
硝酸イソソルビド2.5mg噴霧時:36.5±4.2ng/mL
硝酸イソソルビド5mg経口:5.8ng/mL
硝酸イソソルビド2.5mg
噴霧時:α相7.5分,β相55.2分
熱感・潮紅・めまい・血圧低下・動悸・失神(0.1%未満),頭痛・発疹・胃部不快感など(0.1%未満)
重篤な低血圧症または心原性ショックのある患者,閉塞隅角緑内障の患者,頭部外傷または脳出血のある患者,高度の貧血がある患者,硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に過敏症の既往のある患者,PDE5阻
害作用を有する薬剤を投与中の患者
20mg経口投与時:3.5±0.50時間
20mg経口投与時:2.7±0.14ng/mL
同上同上
硝酸イソソルビド40mg貼付:12時間
硝酸イソソルビド40mg貼付:2.60±0.2 ng/mL
接触性皮膚炎(5.15 %),頭痛(0.98%),血圧低下(0.19%)
同上
ニトロペン1錠舌下:4分
ニトロペン1錠舌下:1.3 ng/mL脳貧血,血圧低下,熱感,潮紅,動悸,めまい,頭痛,失神,悪心・嘔吐,尿失禁(いずれも0.1%未満)
同上
血圧低下(1.6%),頻脈(1.1%),頭痛・頭重(0.4%),など
同上
めまい,頭重,血圧低下,動悸,浮腫,発疹,接触性皮膚炎(いずれも0.1%未満)
同上
1枚貼付時:3.6±0.8時間
1枚貼付時:0.44±0.25 ng/mL
頭痛(10.7%),頭重(2.5%),発赤(13.5%),発疹(2.8%)
同上
1枚貼付時:約1時間
1枚貼付時:0.3ng/mL
動悸,血圧低下,めまい,起立性低血圧,頭痛,頭重,悪心・嘔吐(いずれも0.1%未満)
同上
一般名商品名作用機序剤形適応投与経路・用量・
用法硝酸イソソルビドニトロール
NOを放出させ,グアニル酸シクラーゼを活性化し,細胞内cGMPを増加させる.
さらに,NOを介してRho kinaseの活性化を抑制し,ミオシン軽鎖のリン酸化が抑制され,血管拡張作用を発揮する
錠剤,注射剤,スプレー狭心症発作の寛解
1回1噴霧(1.25mg),効果不十分の場合には1回1噴霧追加(成
人),1回5~10mgを1日3~4回経口又は舌下投与(成人)
ニトロールR 同上カプセル
狭心症,心筋梗塞(急性期を除く),その他虚血性心疾患
1回1カプセルを1日2回経口投与(成人)
フランドル同上錠剤,テープ同上
1回1枚(硝酸イソソルビドとして40mg)24-48時間後に貼りかえる(成人)
ニトログリセリン
ニトロペン同上錠剤
狭心症,心筋梗塞,心臓喘息,アカラジアの一時的緩解
狭心症:1~2錠を舌下投与.数分後に1~2錠追加可能(成人)
ミリスロール同上注射剤
手術時の低血圧維持,手術時の異常高血圧の救急処置,急性心不全,不安定狭心症
不安定狭心症:0.1~0.2μg/kg/分で開始し,約5分ごとに0.1~0.2μg/kg/
分ずつ増量し,1~2μg/kg/分で維持
ニトロダームTTS 同上貼付剤狭心症
1日1回1枚(25mg)貼付,効果不十分の場合は2枚に増量(成人)
ミニトロ同上テープ狭心症
1日1回1枚(27mg)貼付,効果不十分の場合は2枚に増量(成人)
ミリステープ同上貼付剤狭心症,急性心不全
(慢性心不全の急性増悪期を含む)
1回1枚(5mg) を1日2回,症状により適宜増減する(成人)
作用発現時間最大血中濃度血中半減期主な副作用注意事項・禁忌
10mg経口投与:1時間後
10mg経口投与時:132.4±23.68ng/mL
10mg経口投与時:1.03±0.11時間
顔面紅潮(1.23 %), 頭痛(0.93%),めまい(0.61%)など
本剤に過敏症の既往がある患者,妊娠またはその可能性の
ある場合,心原性ショック,急性心筋梗塞の患者には禁忌
同上同上
経口摂取3時間後10mg経口投与時:26.1±2.2ng/mL
10mg経口投与時:3.51±0.6時間
頭痛・頭重感(2.77 %),顔面紅潮・顔のほてり(2.26%),動悸(1.31%)など
同上
顔面紅潮(1.20%),めまい(0.7 %), 頭痛(0.66 %)等
同上
ほてり・のぼ(0.6%),動悸(0.29 %), 顔面紅潮(0.25%),下肢浮腫・下腿
浮腫・浮腫(0.16%),悪心・嘔吐(0.19 %), めまい(0.16%)等
60mg経口投与時:3⊖5時間
60mg経口投与時:50ng/mL
60mg経口投与時: 約4.5時間
めまい(0.5 %),徐脈(0.4%),顔面紅潮(0.2%),房室ブロック(0.2%), 消化器(1.4%)など
同上
2.5mg経口投与時:5.6±1.0時間
2.5mg経口投与時:1.23±0.26ng/mL
2.5mg経口投与時:36.5±4.2時間
ほてり(0.8%),眩暈・ふらつき(0.7%),頭痛・頭重(0.6%),動悸(0.3%)など
妊娠またはその可能性のある場合には禁忌
4mg経口投与時:0.8±0.3時間
4mg経口投与時:2.25±0.84 ng/mL
4mg経口投与時:1.7±0.7時間
動悸 (0.5 %), 顔面紅潮(0.5 %), 頭痛(0.4 %),肝機能障害,など
心原性ショックの患者,妊娠またはその可能性のある場合には禁忌
一般名商品名作用機序剤形適応投与経路・用量・
用法ニフェジピンアダラート
ジヒドロピリジン系
Ca++拮抗薬:Ca++
の血管平滑筋細胞お
よび心筋細胞内への
流入を抑制
カプセル本態性高血圧症,腎
性高血圧症,狭心症
狭心症:1回10mg
を1日3回経口投与
(成人)
セパミット同上錠剤同上同上ニフェジピン徐放剤アダラートCR 同上錠剤
高血圧,腎実質性高
血圧,腎血管性高血
圧,狭心症,異型狭
心症
狭心症:1回40mg
を1日1回経口投与
(成人)
アダラートL 同上錠剤同上
狭心症:20mgを1
日2回経口投与(成
人)
セパミット⊖R 同上細粒,カプセル同上
狭心症:1回20mg
を1日2回経口投与
(成人)
塩酸ジルチアゼムヘルベッサーベンゾチアゼピン系
Ca++拮抗薬錠剤狭心症,異型狭心症,
本態性高血圧
狭心症:1回30mg
を1日3回経口投与
(成人)
ベシル酸アムロジピンアムロジンジヒドロピリジン系
Ca++拮抗薬錠剤高血圧症,狭心症
狭心症:1回5mgを
1日1回経口投与(成
人)
ベニジピンコニール同上錠剤高血圧症,腎実質性
高血圧症,狭心症
狭心症:1回4mgを
1日2回経口投与(成
人)
3 抗虚血薬各論
①カルシウム拮抗薬

[適応]
 カルシウム拮抗薬は血管平滑筋細胞へのCa++流入を抑制し,冠攣縮の予防に有用である.成人領域においては冠攣縮性狭心症の第一選択薬とされている232).また,内服により冠攣縮性狭心症の生命予後も良好となる233).川崎病の心筋梗塞は安静時または睡眠時にも発症しており,冠攣縮を合併していると考えられる場合がある234).一方,乳児期に冠攣縮が起こっているとする報告は無いが,生後数ヶ月間は心筋細胞内の筋小胞体は未発達であり,細胞内Ca++濃度は心筋細胞膜Ca++チャンネルを介してのCa++流入に依存しており,カルシウム拮抗薬は禁忌と考えるべきである.ジヒドロピリジン系とベンゾチアゼピン系のカルシウム拮抗薬がある.長時間作用型カルシウム拮抗薬は心臓死や非致死性心筋梗塞発症などの心事故を増加させない.但し,うっ血性心不全や,房室ブロックがない場合に限られる.特に,成人領域ではベニジピンが冠攣縮性狭心症の患者生命予後を改善したと報告されている235).ベニジピンは他のカルシウム拮抗薬に比し,有意に冠血管への選択性が高く236),また抗酸化作用も有し237),NOの産生増加による心血管保護作用も高い238).長時間作用型カルシウム拮抗薬を使用した症例の投与を中止した場合にはリバウンド現象が起こることがあり,減量・中止の際には段階的に減量し中止することが重要である.なお,小児の適応はない.(クラスIIb,小児でのエビデンスはない)(表9)

[用量]
 成人の使用量を記載する.なお,小児薬用量は成人量より体重換算にて求め使用する.いずれも経口投与である.

短時間作用型カルシウム拮抗薬:
・アダラート,セパミット: 1回10mgを1 日3回
・ベルベッサー: 1回10mgを1 日3回
長時間作用型カルシウム拮抗薬
・セパミット-R,アダラートL: 1回20mgを1 日2回
・アダラートCR: 1回40mgを1日1回
・アムロジン: 1回5mgを1日1 回与
・コニール: 1回4mgを1日2 回

[禁忌]
 妊娠またはその可能性がある場合,心原性ショック,急性心筋梗塞,本剤に薬剤過敏の既往がある場合などが禁忌である.

[副作用(有害事象)]
 めまい,ほてり,眩暈・ふらつき,動悸,顔面紅潮,頭痛などの循環器症状,悪心・嘔吐などの消化器症状が認められる.しかしいずれも数%以下である.

[使用上の注意事項]
 投与を急に中止したときに症状が悪化することがあり,休薬する場合には徐々に減量すること.降圧作用に基づくめまい等が出現することがあるので,高所での作
業,自動車運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させる.

 生後数か月以内の新生児・乳児に対する使用は禁忌とするべきである.

②硝酸薬

[適応]
 硝酸薬はNOを放出させ,グアニル酸シクラーゼを活性化し,細胞内cGMPを増加させ,動脈・静脈ともに血管拡張作用を発揮する.さらに,硝酸薬はNOを介して
Rho kinase の活性化を抑制239).その結果,ミオシン軽鎖のリン酸化が抑制され血管平滑筋が弛緩し血管が拡張する.動脈の拡張に伴い血圧は低下し,後負荷は減少し酸素需要を減少させる.また,静脈の拡張に伴い右室前負荷は減少し,酸素需要を減少させる.労作時狭心症,冠攣縮性狭心症の発作時および発作予防に適応となる.発作時にはニトログリセリンや硝酸イソソルビドの舌下,または口腔内スプレーが有効でさらに発作予防には長時間作用型硝酸薬が有用である.なお,小児の適応はない.(クラスIIb,小児でのエビデンスは無い)(表10)

[用量]
 成人の使用量を記載する.なお,小児薬用量は成人量より体重換算にて求め使用する.

発作時:
・硝酸イソソルビド: 1 錠舌下投与または1噴霧.効果がない場合には約5 分後に再度の舌下または噴霧を行う(成人例).小児では体格に合わせ1/2ないしは1/3錠の
  舌下投与を行う.
・ニトログリセリン: 1 錠舌下投与.効果がない場合には約5分後に再度1錠舌下する(成人例).小児では体格に合わせ1/2ないしは1/3錠の舌下投与を行う.
発作予防:
・長時間作用型硝酸薬が有効である.ただし,継続的使用により耐性を生じることがあるので注意する.
・ニトロールR: 1日20mgを1 日2回経口投与

[禁忌]
 重篤な低血圧症または心原性ショックのある患者,閉塞隅角緑内障の患者,頭部外傷または脳出血のある患者,高度の貧血がある患者,硝酸・亜硝酸エステル
系薬剤に過敏症の既往のある患者,PDE5 阻害薬を投与中の患者などへの使用は禁忌となる.

[副作用]
 熱感・潮紅・めまい・血圧低下・動悸・失神などの循環器症状が0.1%未満認められる.また,頭痛・胃部不快感なども0.1%未満認められる.貼付薬による接触性
皮膚炎は数%に認められる.

[使用上の注意事項]
 急に投薬を中止することにより症状の悪化が危惧されるため,徐々に投与量を減じる.ただし,過度の血圧低下が起こった場合には,直ちに本剤の投与を中止し,昇
圧剤の投与等,必要な処置を行う.起立性低血圧を起こすことがあるので注意する必要がある.

③β遮断薬

[適応]
 安定労作性狭心症の第一選択薬はβ遮断薬である.心臓以外の臓器副作用を軽減するためにβ1 選択性遮断薬が有効.心筋の仕事量を減少させ酸素消費量を抑制するとともに,拡張期延長に伴い冠血流量を増加させて心筋虚血の発生を予防する.アテノロール,ビソプロロール,メトプロロールが有用である240).但し,冠攣縮が存在すると考えられる状況ではα受容体作用が優位となり,冠トーヌスを亢進させ冠攣縮性狭心症を増悪させ,予後を悪化させることがあり注意を要する235).カルペジロールはα1遮断効果を有する非選択性β遮断薬であり,冠動脈の末梢抵抗を減少させ冠血流量を増加させる241).冠攣縮性狭心症にβ遮断薬を使う際にはカルシウム拮抗薬,硝酸薬の併用が推奨される.なお,小児の適応は無い.(クラスIIb,小児でのエビデンスはない)(表11)

[用量]
 成人の使用量を記載する.なお,小児薬用量は成人量より体重換算にて求め使用する.
・テノーミン: 1回50mgを1 日1回
・メインテート:1 回5mgを1日1 回
・セロケン:1 日60~ 120mgを2~ 3回に分割
・アーチスト:1回1.25mgを1日2 回より開始し,段階的に増量

[禁忌]
 気管支喘息・気管支痙攣のある患者,糖尿病性ケトアシドーシス・代謝性アシドーシスがある患者,心原性ショックの患者,高度の徐脈,非代償性の心不全患者,
強心薬又は血管拡張薬を静脈内に投与する必要のある心不全患者,肺高血圧による右心不全がある患者,うっ血性心不全のある患者,妊娠またはその可能性がある場合,β遮断薬に対する薬剤過敏の既往がある患者には使用禁忌となる.

[副作用]
 徐脈,めまい・ふらつきなどの循環器症状が1%以下認められる.その他,倦怠感,悪心・嘔吐,頭痛,肝機能障害などが0.5%以下に認められる.

[使用上の注意事項]
 長期投与の場合には定期的に心機能のチェックを行う.本剤使用中の狭心症の患者で急に投薬を中止した際に心筋梗塞を起こすことがあるので,休薬を要する場合
には徐々に減量する.手術前48時間は投与しないことが望ましい.めまい,ふらつきが現れることがあるので,本剤投与中の患者(特に投与初期)には,自動車の運転等危険を伴う機会の作業に注意させる.

④ニコランジル

[適応]
 ニコランジルはニコチン酸アミド誘導体であり,血管平滑筋細胞のATP感受性K+チャンネルを活性化し細胞内へのCa++流入抑制,筋小胞体からのCa++放出の抑制,cGMP増加による細胞外へのCa++汲み出しの促進などにより,冠動脈拡張と抗冠攣縮作用を有する242),243).カルシウム拮抗薬に抵抗性の冠攣縮性狭心症に対してカルシウム拮抗薬との併用療法,さらに,低血圧,徐脈を伴う冠攣縮性狭心症にも有用である.また,ニコラジルはミトコンドリアに作用して心筋虚血のプレコンデイショニング様作用を発揮する.小児の適応は無い.(クラスIIb,小児でのエビデンスはない)(表11)

[用量]
 成人の使用量を記載する.なお,小児薬用量は成人量より体重換算にて求め使用する.
 ・シグマート: 1回5mgを1 日3回 経口投与

[禁忌]
 PDE5 阻害薬を投与中の患者に対しては使用禁忌

[副作用(有害事象)]
 頭痛(3.6%),嘔気・嘔吐(0.44%),めまい(0.15%),倦怠感(0.12%)など.

[使用上の注意事項]
 投与開始時には血管拡張作用による拍動性の頭痛を起こすことがあり,減量または中止する.
表9 カルシウム拮抗薬の一覧 (成人の使用量を記載する.なお,小児薬用量は成人量より体重換算にて求め使用する)
表10 硝酸薬の一覧 (成人の使用量を記載する.なお,小児薬用量は成人量より体重換算にて求め使用する)
表11 ニコランジルおよびβ遮断薬の一覧 (成人の使用量を記載する.なお,小児薬用量は成人量より体重換算にて求め使用する)
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)