3 小児期の特殊性と問題点
 小児期に認められる心筋虚血は川崎病後の冠動脈合併例がほとんどで,その他,左冠動脈肺動脈起始症や冠動脈瘻などの先天性冠動脈異常,完全大血管転換症の冠動脈移植術後の冠動脈有意狭窄や閉塞などの疾患において認められる.特に川崎病では冠動脈瘤が残存するとその前後に狭窄性病変が出現し,血管内腔を狭小化させ,心筋虚血が惹起される.また,冠動脈病変が残存した症例では病変部位は勿論,退縮した部位においても血管内皮機能の低下が認められ229),この様な症例では冠攣縮が惹起される可能性がある.一方,小児期には側副血行路の発達が良好であり,成人で認められるような貫壁性の心筋虚血を起こすことは極めて稀である.また,小児期に脂質プラークの形成・破綻などを来した不安定狭心症が認められたとの報告も無い.新生児・乳児期には自覚症状に対する表現が不十分であり,臨床的に心筋虚血を見逃してしまうことがある.
次へ
小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)