心不全危険因子心不全
Stage A器質的心疾患なし心不全症状なし心不全ハイリスクあり
Stage B器質的心疾患あり心不全症状なし心不全徴候なし
Stage C器質的心疾患あり心不全症状もしくは既往あり
Stage D特別な治療を要する難治性心不全
器質的心疾患への進展心不全症状の出現
安静時の難治性心不全症状
治療ゴール以下を有する患者
・最大限の薬物治療にもかかわらず,安静時に著明な症状(繰り返し入院,
もしくは特殊な医療行為なしでは安全に退院できない患者など)
以下を有する患者
・器質的心疾患の存在
および
・息切れや易疲労 感,運動耐容能 低下以下を有する患者
・心筋梗塞既往
・左室肥大および 駆出率低下を含 む左室リモデリ ング
・無症候の弁膜症以下を有する患者
・高血圧・動脈硬化性疾患・糖尿病・肥満
・メタボリックシンド ローム
・心毒性のある薬剤 の使用歴
・心筋症家族歴・高血圧治療・禁煙を促す・高脂血症治療
・規則正しい運動を促す
・アルコール減量,禁止 薬物中止を促す
・メタボリックシンド ロームのコントロール
・ACE 阻害薬またはARB を血管疾患または糖尿病を有する患者に適正使用
薬物治療ゴール
・すべての状態を stage A 以下とする
・ACE 阻害薬またはARB の適正使用
・β遮断薬の適正使用
適応患者へのデバイス治療
・植え込み型除細動器
治療ゴール
・すべての状態をstage AとB 以下とする
・塩分制限
   通常の薬物
・体液貯留に対する利尿薬
・ACE 阻害薬・β遮断薬
   特定患者への薬物
・アルドステロン拮抗薬
・ARB
・ジギタリス
・ヒドララジン/ 硝酸薬
適応患者へのデバイス治療
・両心室ペーシング
・植込み型除細動器
治療ゴール
・適切なstage A,B,C 以下の レベル
・適切なレベルのケアを決定
     オプション
・慈悲深い終末期ケア
・特殊な治療 心臓移植 強心薬持続投与
 永久的な機械的循環補助 実験的手術または投薬
Stage 症状
A
心不全に進展するリスクが増大しているが,正常
な心機能を有し容量負荷を認めない患者
例:心毒性を有する薬剤の使用歴,遺伝性心筋症
の家族歴,単心室,修正大血管転位
B
心奇形あるいは低心機能であるが,心不全症状も
心不全の既往もない患者
例:左室拡大に伴う大動脈弁閉鎖不全,アントラ
サイクリンの使用歴があり左室収縮能が低下し
ている
C
心不全の既往または症状を有する,構造的ないし
機能的心臓病患者
D
強心剤の持続投与,機械的循環補助,心臓移植,
あるいはホスピスケアを要する終末期心不全の
患者
クラス症状
Ⅰ 無症状
Ⅱ 乳児:授乳中の軽い多呼吸または発汗
小児・学童:努力性呼吸

乳児:授乳中の著明な多呼吸または発汗
心不全による体重増加不良と哺乳時間の延長
小児・学童:著明な努力性呼吸
Ⅳ 安静時の多呼吸・陥没呼吸・呻吟あるいは発汗
3 心不全の分類
NYHA 分類
 New York Heart Association(NYHA) 分類は, 現実的な身体活動制限によって評価するという簡便さから成人の心不全重症度分類に広く用いられている指標で
ある.身体活動の制限される度合いから求めた指標であるため幼小児への適用は限定される.

Ross 分類
 Ross 分類は幼小児における心不全重症度評価のために考案された指標である(表3)98).1994年にカナダ心臓血管協会により公的システムとして提唱され99)
National Cardiomyopathy RegistryやCarvedilolの多施設共同研究にも用いられている.このRoss 分類は血漿ノルアドレナリン濃度と正相関し98),β受容体の密度とは逆相関することが示されており100),このシステムの妥当性の根拠の一つとされる.

その他のScoring システム
 小児心不全の重症度決定のためのスコアリングシステムはこれら以外にもいくつか提唱されている.たとえば乳児に対する12ポイントスケール101)などがそうで,栄
養の質と期間,呼吸数と様式,心拍数,末梢循環,拡張期充満音の有無,肝腫大の程度などをその変数としている.Ross scoreをより詳細に分類したModified Ross
score102),103)などもある.しかしこれらのシステムも多数の対象に使用したものではなく,また生物学的指標や運動耐容能と比較も十分にはなされていない.ただしOhuchiらは先天性心疾患の小児や若年成人の臨床症状と神経体液性因子の変化に相関があると詳細に報告している104)

Staging system
 NYHA分類もRoss スコアも現時点という時間的には一点の症候に焦点をあてたものであり,病初期の患者を選別したり,病気が安定した状態にあるのか代償され
ているのかを見分けるシステムではない.2002年以降のACC/AHA心不全ガイドラインではこれらの不足を説明する心不全の分類シェーマを用いてNYHA分類を補っ
ている(図8)101).ACC/AHA ステージングは,心不全リスクで患者を選別し,そのリスクに対して早期に介入し症状発現を遅らせるように設計されており,また症状
が発現した患者に対してより強力な管理が必要であることも記されている.このACC/AHAにより提唱されている成人用心不全分類システムは多少の変更を加えるだけでほぼそのまま幼小児にも適用できる(表4)105)

表3 Ross分類
表4 乳児および小児の心不全ステージングシステムの提案
図8 心不全の病期分類と推奨される治療
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小児期心疾患における薬物療法ガイドライン
Guidelines for Drug Therapy in Pediatric Patients with Cardiovascular Diseases ( JCS2012)